公開日:2016年6月20日 

老朽化した高浜原発が運転延長審査に合格→崩れ去る40年廃炉ルール

高浜原発1号機、2号機
原子力規制委員会は2016年6月20日、運転開始から40年を超えた本来は廃炉になるはずの…いわゆる老朽原発である関西電力の高浜原発1号機、2号機について20年間の運転延長を可能にする「審査書案」を了承し審査を合格させました。

これで高浜原発1号機は2034年、高浜原発2号機は2035年まで運転できることになります。ただし追加工事などの必要があるため、高浜原発1号機、2号機の実際の再稼働は2019年の秋以降になる見通しです。

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福島第一原発事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年と規定しています。しかしこの規制には例外…抜け穴があって原子力規制委員会の延長審査に合格すれば最長20年の延長が1回だけ可能と規定されています。つまり延長審査に合格すれば原発の運転開始から数えて最長60年まで運転できるということです。

運転開始から40年を超えた本来は廃炉になるはずの老朽原発の延長運転が認められるのは福島原発事故後…初めての出来事です。

これで福島原発事故後に創られた原発の運転開始40年廃炉ルールが名実ともに底が完全に抜け落ちることになります。

関西電力はさらに運転開始から39年がたつ美浜原発3号機についても運転期間の延長を目指すとしています。

■高浜原発1号機、2号機はどれだけ老朽化しているのか?

一般的に老朽原発と呼ばれるのは運転開始から40年以上たった原発です。日本の原発の中から老朽原発をピックアップしてみます。

老朽原発の運転開始からの年数(2016年6月2日)
原発名 運転年数 現状 事業者
敦賀原発1 46年 廃炉決定 日本原電
美浜原発1 45年 廃炉決定 関西電力
美浜原発2 43年 廃炉決定 関西電力
島根原発1 42年 廃炉決定 中国電力
高浜原発1 41年 稼働予定 関西電力
高浜原発2 40年 稼働予定 関西電力
玄海原発1 40年 廃炉決定 九州電力

運転開始から40年以上たった老朽原発は全部で7つ。そのうち4つ…美浜原発1号機、美浜原発2号機、高浜原発1号機、高浜原発2号機が関西電力です。つまり老朽原発の57%…過半数を関西電力1社が抱えているわけです。

さらに運転開始から35年以上たった原発…老朽原発予備軍の原発も見てみましょう。一覧表の下に追加してみます。

老朽原発の運転開始からの年数(2016年6月2日)
原発名 運転年数 現状 事業者
敦賀原発1 46年 廃炉決定 日本原電
美浜原発1 45年 廃炉決定 関西電力
美浜原発2 43年 廃炉決定 関西電力
島根原発1 42年 廃炉決定 中国電力
高浜原発1 41年 稼働予定 関西電力
高浜原発2 40年 稼働予定 関西電力
玄海原発1 40年 廃炉決定 九州電力
美浜原発3 39年 稼働予定 関西電力
伊方原発1 38年 廃炉決定 四国電力
東海第2 37年 稼働予定 日本原電
大飯原発1 37年 未定 関西電力
大飯原発2 36年 未定 関西電力
玄海原発2 35年 未定 九州電力

すると老朽原発予備軍の原発は全部で6つ。そのうち3つ…美浜原発3号機、大飯原発1号機、大飯原発2号機つまり半数が関西電力の原発なのです。

ということは老朽原発老朽原発予備軍の原発の53%を関西電力1社で抱え込んでいることになります。

関西テレビが関西電力の八木誠社長の言葉として、こう報道しています。※1

関西電力の八木誠社長
「老朽した原発を使い続けるのではありません。主要な設備についてはほとんど取り替わっております」

この言葉は、逆に言えば交換できない設備があることを暗に認めているものです。

そして原発事故では、その交換できない設備こそが致命傷になるのです。

ところで原発の交換できない設備の中で一番古いままなのは…いったい何だと思いますか?

それは原発のコンセプト…つまり原発の骨格となる発想そのものです。日本の原発を審査している日本の原子力規制委員会は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)を真似して作ったものですが、アメリカ原子力規制委員会(NRC)のトップだったグレゴリー・ヤツコ前委員長が、福島原発事故後に語ったの言葉に耳を傾けてみましょう。※3
アメリカ原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ前委員長

アメリカ原子力規制委員会のグレゴリー・ヤツコ前委員長
「原発は運転開始からは40年ほどであっても建設に10年かかっているかもしれません。さらに、その前の設計に5年から10年かかっているものもあります。つまり原発は60年…あるいはそれ以上前の技術で作られているということです。多くの原発が改良され最新化されていますが設計の骨格となる発想は50~60年前のものです。どこかの時点で『(老朽原発を無理やり運転させるのは)もういいかげん止めよう』と言わなくてはなりません。」

原発の交換できない設備…と言われて私が真っ先に思い出すのは福島第一原発の格納容器のことです。福島第一原発が深刻な危機にあった最中、アメリカ原子力規制員会のチャック・カスト氏が吐き捨てた本音をアーニー・ガンダーセン博士が聞いています。※4
アーニー・ガンダーセン博士

アーニー・ガンダーセン博士
アメリカには福島第一原発と同じGE社のマークⅠ型原子炉が23機あります。マークⅠ型原子炉は放射能を封じ込める格納容器が(そもそも)小さすぎるのです。アメリカ原子力規制委員会は1986年当時、メルトダウンが起これば爆発して放射能漏れ起こす可能性が85%と計算していました。大量の水素が発生して格納容器が吹き飛ばされ放射能が外に放出されてしまうと言うのです。このことは3機が爆発した福島の事故が証明しています。実はアメリカ原子力規制員会はこの設計では過酷な事故に耐えられないことを知っていたのです。福島第一原発が深刻な危機にあった最中、アメリカ原子力規制員会のチャック・カストという人物が『(マークⅠ型原子炉の格納容器は)世界最悪の格納容器だ』と言いました。

格納容器のさらに中、原発の心臓部にあたる圧力容器も交換できません。圧力容器は、核燃料が発する中性子に40年以上さらされており当然もろくなっています。

福島第一原発で最初に水素爆発を起こした福島第一原発1号機。この1号機が運転を開始したのは1971年3月26日でした。

福島第一原発1号機が水素爆発を起こしたのは2011年3月14日ですから運転40年以上の老朽原発になるまであと12日だったことになります。

しかし当時の原子力安全・保安院はその1ヶ月前の2011年2月7日。もうすぐ老朽原発となる福島第一原発1号機について東京電力が実施した経年劣化対策を審査し、50年まで運転延長を認可…つまり、あと10年先まで原発を運転させても大丈夫だと国家公認で太鼓判まで押して審査に合格させていたのです。
福島第一原発1号機の審査後に発行された50年運転の認可書

この国家公認で経年劣化対策に太鼓判を押された福島第一原発1号機が33日後どうなったか?

2011年3月12日の福島第一原発1号機が水素爆発を起こした直後に撮影され、当日のうちに東電によって公開された写真がこれです。原子炉建屋の上半分のコンクリートが爆発で吹き飛び、鉄骨がむき出しになってしまっています。※6
水素爆発直後の福島第一原発1号機建屋の画像
では老朽原発になるまで…あと12日だった福島第一原発1号機の中の様子はどうだったのでしょう?

東日本大震災が起きた2011年3月11日。福島第一原発1号機の中で作業していた木下聡さんは当時の原発内の様子をこう証言しています。※2
福島第一原発の元作業員木下聡さん

木下聡さんの証言
東電は「全電源喪失と地震の揺れは無関係」と言っているが、そんなのあり得ない。謙虚に検証する姿勢がないと、安全神話が復活する。

そもそも運転開始から40年になる1号機の老朽化はすごかった。重要器具は定期検査で交換するが、周辺の装置はそのままだ。追加、追加でどんどん配管を増やし、耐火構造にするために防火剤を塗りつけるから、重量は半端じゃなかった。設計基準を大幅に超えていたはずだ。

建屋のコンクリートも相当劣化していた。インパクトドライバーを当てると分かる。ずぶずぶと刺さって、粉は真っ白。鉄筋をモルタルで塗り固めるときもクレーンで流し込むだけ。本来はバイブレーターを使うが、竹の棒で突っつくだけ。施工はひどいものだった。だから水素爆発で粉々に吹き飛んだ。
(中略)
あの日(2011年3月11日)は午後から、1号機で定期検査のための足場を組む作業をしていた。1階には私と同僚の2人。4階に元請けと協力会社の4、5人がいた。(東日本大震災の)最初の揺れはそれほどでもなかった。だが2回目はすごかった。床にはいつくばった。

配管は昔のアンカーボルトを使っているから、(地震で)揺すられると隙間ができる。ああ、危ないと思ったら案の定、無数の配管やケーブルのトレーが天井からばさばさ落ちてきた。落ちてくるなんてもんじゃない。当たらなかったのが不思議。

(福島第一原発1号機の)内部はすさまじい破壊ぶりだった。

木下聡さんは2013年8月に肺がんが原因でご逝去されましたが、なくなる直前に語ってくれた…これらの出来事が…みんな夢幻だとでもいうのでしょうか。私達は今日、木下聡さんが懸念していた原発の安全神話の復活に立ち会っているのかもしれません。

※1http://www.ktv.jp/news/index.html#0535147
※2http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006334811.shtml
※2http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201309/0006327168.shtml
※3http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=160309
※42014年6月1日放送「ヤンキー原発閉鎖~米・バーモント州5年の記録~」NHKBS1スペシャル
※5http://www.meti.go.jp/press/20110207001/20110207001.pdf
※6http://photo.tepco.co.jp/date/2011/201103-j/110313-01j.html
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