2011年8月28日時点の福島県のセシウム汚染地図
今日は発表されたばかりの東北大学大学院の吉田浩子講師らの論文…避難指示区域の屋内における放射性セシウム汚染を取り上げます。※1

簡単にまとめると家のの放射能汚染と家のの放射能汚染はまったく別物だということです。なぜなら放射能汚染の沈着の仕方がまったく違うから。家のの放射能汚染は雨と共に湿性沈着した物。それに対し家のの放射能汚染は、空気と共に屋内に運ばれ乾性沈着した物。

だからまったく別物です。別物だから家のの放射線量が高くても、家のの放射能汚染が低いこともあるし。家のの放射線量が低くても、家のの放射能汚染が高いこともある。

そして今回の調査結果では、家の中の放射能汚染については福島原発に近ければ近いほど汚染は高くなる傾向があった。

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それに対して家のの放射能汚染については福島原発に近いか?遠いか?は関係なく、放射能で汚染された雨がその地域に降ったか?降らないか?で決まる。下の地図は2011年8月28日時点の福島県のセシウム汚染地図。※2
2011年8月28日時点の福島県のセシウム汚染地図

■避難指示区域家屋内における放射性セシウム汚染
―汚染レベルは原発からの距離と相関―

【概要】

一般に住民は自宅屋内で過ごす時間がもっとも長いため、身近な屋内汚染は毎日の日常的な被ばくに繋がる可能性があります。また、屋内は除染対象となっていないことから、今後の住民の帰還にあたって屋内汚染の状況を知ることは重要です。しかし、福島原発事故後にこの観点からの調査及び報告はまだありません。

東北大学大学院薬学研究科ラジオアイソトープ研究教育センターの吉田浩子講師は、福島県飯館村南相馬市小高区、双葉町大熊町富岡町の避難指示区域の家屋について部屋、屋根裏及び柱の表面汚染を乾式スミア(拭き取り)法によってサンプリングし、屋内汚染の評価を行った結果(屋内のセシウム)汚染レベルは原発からの距離と相関関係があることを明らかにしました。
避難指示区域の中で調査対象になったのは福島県の飯館村、南相馬市小高区、双葉町、大熊町、富岡町
図1は、地域ごとに放射性セシウムによる表面汚染密度の頻度分布を相対的に示したものです。
放射性セシウムによる表面汚染密度と相対頻度のグラフ
福島第一原発からの距離を括弧内に示しています。飯館村では表面汚染密度の低い数値に分布していますが、大熊町、双葉町や富岡町の原発により近い地域では高い数値にまで分布が広がっており(屋内のセシウム)汚染レベルは原発からの距離と関係のあることを示しています。

図2は、大熊町、双葉町、富岡町の原発に近い各住家における放射性セシウムによる表面汚染密度()と福島第一原発からの距離の関係を示したものです。
放射性セシウムの表面汚染密度と福島第一原発からの距離
汚染レベルは原発からの距離の二乗に反比例していることが示されています。一方、屋外の空間線量率()と屋内の空間線量率()には距離との相関関係は認められませんでした。

【詳細な説明】

本成果は、福島第一原子力発電所事故後の避難指示区域家屋内における放射性汚染についての初めての報告です。2013年7月から2015年1月にかけて95軒の住家で2,653の試料を採取した調査結果をまとめています。

放射性プルームが通過する際に、降雨がないと乾性沈着が生じます。気密性の悪い(風通しの良い)日本の木造住家では換気率が高く、プルーム通過時の住家への空気(エアロゾル)の入り込みにより屋内に乾性沈着が生じたと考えられます。調査はすべての部屋および屋根裏の平面並びに柱の垂直面を対象とし、人の掃除などの生活活動による影響を避けるため、人の手が加わっていない箇所についてサンプリングを行っています。

放射性セシウムによる(屋内の)表面汚染密度の頻度分布には明らかな地域差があり、原発からの距離と関係のあることが示されました(図1)。
放射性セシウムによる表面汚染密度と相対頻度のグラフ
大熊町、双葉町、富岡町の原発に近い住家では、表面汚染密度()は距離の二乗に反比例していることが示されました。(図2
放射性セシウムの表面汚染密度と福島第一原発からの距離
一方、屋外の空間線量率()と屋内の空間線量率()には距離との相関関係は認められませんでした。屋外の空間線量率は主に放射性セシウムの湿性沈着によるもので、降雨とともに湿性沈着はまだらに生じたため原発から離れた地域でも高い沈着が観察されましたが、これとは異なり乾性沈着は原発からの距離に伴い減少していることを意味しています。

なお、屋内の空間線量率は屋外の湿性沈着の影響が強く、屋外の空間線量率のほぼ0.4 の値となっています。また、図2では原発に近い地域の住家では湿性沈着(屋外の空間線量率)が低くても、屋内の汚染レベルが高い例があることも示されました

※1http://www.pharm.tohoku.ac.jp/info/file/20160601.pdf
※2http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1910/2011/09/1910_0912.pdf

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