今回の記事から4回連続で『放射性ヨウ素汚染地図』の特集を書きます。
1.なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのか?
2.幻の放射性ヨウ素汚染地図【福島県版】
3.幻の放射性ヨウ素汚染地図【関東・東京版】
4.幻の放射性ヨウ素汚染地図【日本全国版】
なぜ放射性セシウムの汚染地図だけではダメなのでしょうか?
なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのでしょうか?
■なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのか?
▼沸点が違うから汚染地域が違う
水 | ヨウ素 | セシウム | |
沸点 | 100度 | 184度 | 671度 |
水は100度で沸騰し気体になりますから、水の沸点は100度。それに対し、ヨウ素は184度、セシウムは671度が沸点です。ですので当然、放射性ヨウ素のほうが放射性セシウムより早い段階で気化し、壊れた原子炉から外へと飛び出していきました。
これがはっきりわかるのが2011年8月25日に国立環境研究所が公表した三次元化学輸送モデル(CMAQ)改良版です。※1
左が放射性ヨウ素131、右が放射性セシウム137です。
この動画は2011年3月12日~23日(12日分)の放射性物質の沈着積算量を推定したものです。
左の放射性ヨウ素131を見ると、3月12日20時頃からすでに放射性ヨウ素131の大量放出があったことがよくわかると思います。※左右で再生時間がズレる場合はパソコンのF5キーを押してみて下さい。スマホからだと回線速度の関係で同時再生は無理かも。
そして沸点が違いますから、放射性ヨウ素131と放射性セシウム137で汚染された地域は、ズレが生じます。下の画像はCMAQによる2011年3月12日~29日(18日分)までの沈着積算量(推定)です。※2
さっきの動画と同じく左がヨウ素131、右がセシウム137です。
画像を比較すると左の放射性ヨウ素131のほうが広範囲に飛散し、かつ赤い色の高濃度汚染は福島第一原発から南下したことがわかります。
右の放射性セシウムのほうは福島第一原発の北側に高濃度汚染が広がっていますので違いが分かると思います。
■なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのか?
▼なりやすい病気が違う
ヨウ素131 | セシウム137 | |
考えられる病気 | 甲状腺がんなど甲状腺障害 | がん、白血病、心臓病 |
放射性ヨウ素131を体内に取り込むとなりやすい病気として甲状腺がんなどの甲状腺障害があげられます。今、福島県の子供達から次々と小児甲状腺がんや甲状腺腫瘍が見つかって社会問題になっていますが、その原因と疑われるのが、この放射性ヨウ素131です。
放射性セシウムを取り込むことでなりやすい病気としてがん、白血病、心臓病などが挙げられます。
以上、▼汚染地域が違う、▼なりやすい病気が違う、だからこそ『放射性ヨウ素131汚染地図』が必要だということがわかりました。しかし、この『放射性ヨウ素131汚染地図』を作成する機会を私達は永遠に失ってしまいました。放射性ヨウ素131の半減期が8日と短かったためと、何より日本政府…官僚の方々と民主党政権が無能だったためです。
ヨウ素131 | セシウム137 | |
半減期 | 8日 | 30年 |
半減期とは、放射性物質が半分に減るまでの時間です。放射性ヨウ素131の半減期は8日ですので。
8日で1/2、16日で1/4に、24日で1/8に、32日で1/16…という具合に短期間で半減を繰り返し今ではもう計測は不可能なってしまいました。
それに対して放射性セシウム137の半減期は30年であり、良くも悪くも30年は半減しません。それでこんな立派なセシウム汚染地図を文部科学省が作れるわけです。※3
このように完璧な形で『放射性ヨウ素131汚染地図』を見る機会は、永遠に来ないでしょう。
でもだからこそ、この失われた『放射性ヨウ素131汚染地図』の痕跡や断片に、次回から迫ってみたいと思います。
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≪幻のヨウ素汚染地図を復活させるシリーズ≫
★なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのか?
★幻の放射性ヨウ素汚染地図【福島県版】
★幻の放射性ヨウ素汚染地図【関東・東京版】
★幻の放射性ヨウ素汚染地図【日本全国版】
※1 http://www.nies.go.jp/shinsai/index.html
※2 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2011/20110825/20110825.html
※3 http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/6000/5847/24/203_0727.pdf