質問(質問者:宮城県/30代/主婦)
2014年3月現在の、福島第一原発事故の現状を矢ヶ崎克馬先生は、どのようにご覧になりますか?事故収束作業は順調と言えるでしょうか。

回答(回答者:矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授)
矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授
福島第一原発事故の収束は、非常に危機的な状況にあります。深刻です。

基本的に放射能漏れがあったら、生物の体にとって非常に悪い結果をもたらす種が蒔かれているってことを意識しないといけないんです。たくさんの人達が発がんし苦しんで死ぬ可能性です。

今の福島第一原発の現状を言えば空気中には1日あたり2億4000万ベクレルの放出が続いていて、海には非常に単純な作業ミスも含めて放射能汚染水が垂れ流され…放射性セシウムだけでも1日あたり200億ベクレル流失しています。※1

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これに対してチェルノブイリ原発事故は大爆発が起こったんですが、その爆発現場にあった放射能の非常に強い炉心なども含めて石棺に入れ、コンクリートで固めてしまうということに曲がりなりにも成功しました。

したがってチェルノブイリ原発事故の現在の状態というのは、石棺に近づけば放射線はものすごく強いけれども放射能のほこりが新たに周囲に飛び出て被ばく源を拡散していくということは、まったくない状況になっています。

日本の福島第一原発事故の場合にはメルトダウンした核燃料が今、どういう状態で?どこにあるか?すら確認できていなくて、それにどう対応するか?という作業もまったく行われていない。手がつけられない状態にあるわけなんです。

4つもの原子炉が、この手がつけられない状態にある。チェルノブイリ原発事故に比較して事故収束の手が打たれているか?という点では、日本はまったくめどが立っていない。その点がチェルノブイリ原発事故に比較してはるかに深刻な点だと思います。

事故収束には、国が収束させるのにどれくらいの覚悟を持ってやるか?予算をつぎ込むか?が非常に大きな関わりをもっていますが、依然として東電に任せっぱなし。時々、国は東電に対して文句は言うけれども。

新たに福島第一原発1号機でですね、炉心冷却のためにつぎ込んでいた水の8割がずーっと今まで漏れ続けていただなんて、今まで気が付かなかったということ自体がまさに作り話で、実際は知りながらいつ発表できるか……発表する前に手を打てれば発表しないですむ!という思惑で、どんどん発表が延ばされてきたと思うんですけれども。

こういう風にすれば、いついつまでに完全に外界の環境とシャットダウンできるというメドが立っていないという点で、まさに今まで起こった原子炉事故のなかでも一番怖ろしい問題を抱えていて、それに対する危機感と責任感が、東電と政府にまったく欠け落ちている。マスコミにも欠け落ちている。

住民を被曝から防御することと、原発に対する基本姿勢について政治が責任もってアプローチできていない状況だと思います。一部野党の特定の議員さんの中には、非常に熱心な方もおりますが。

エネルギー問題として脱原発。将来、原発はやらないようにしておこうと言っても、今、住民の被曝問題として、これ以上放射性物質を外に出させないためにはどういう手をに打つべきか?という対策が、まったくされていない。政治的にも非常に恐ろしい状態だと思います

編集後記
この記事の投稿日を見ていただきますと2014年03月11日。そうです、東日本大震災というか…福島原発事故の避難者や学者の皆さんにとって忙しさのピークとなる、3.11にも関わらず矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授は取材を快く承諾して下さいました。

実は矢ヶ崎克馬名誉教授…前日にヨーロッパの学会から帰国されたばかりで、口には出されませんでしたが、矢ヶ崎克馬名誉教授もお疲れだっただろうと思います。

いろいろと福島原発の現状についての未公開のデータや資料なども見せていただき、やはり現在の福島第一原発の現状は決して油断できない!と矢ヶ崎克馬名誉教授とお話しして改めて確信しました。

矢ヶ崎克馬名誉教授は、今年2014年は市民の皆さんへ情報発信をしたい!とおっしゃっていますので皆さん、期待して下さいね!

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※1 http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/184/0063/18410070063001a.html