世界の核保有国

今回は核兵器の保有数の国別世界ランキング(2018年最新版)。さらに核実験回数の国別世界ランキング。最後に実際に核兵器が使用された核実験場の世界地図を見ていこうと思います。

■核保有国の核兵器保有数ランキング

まずはどの国が?核兵器をいくつ保有しているのか?を把握するため核保有国の核兵器保有数ランキングを見ていきましょう。

それから核保有国の核兵器保有数ランキングをご覧いただく前に確認しておきたいことがあります。核兵器には当然、軍事機密がつきものですから、これから見るデータもあくまで外部の研究組織による推定にずぎず実際の核弾頭数と異なる可能性があります。

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そこで当たらずといえども遠からずにする方法として、世界的に有名なアメリカ科学者連盟FASとストックホルム国際平和研究所SIPRIによる核弾頭数の推定の両方をご紹介します。※1※2

なおインドとパキスタン、北朝鮮の推定結果は、より核弾頭数が多い方を掲載してあります。アメリカ科学者連盟FASとストックホルム国際平和研究所SIPRIで順位が異なる場合は、よりデータが新しいアメリカ科学者連盟(FAS)の順位を優先しました。

イスラエルについては、自らの核兵器の保有を肯定も否定もしない立場をとっていますが、国際原子力機関(IAEA)のモハメド・エルバラダイ事務局長(2007年当時)や世界の多くの研究組織もイスラエルが核兵器保有国であることを前提に調査していますので公然の秘密といった観です。もちろん今読んでいただいているこの記事もイスラエルが核保有国であることを前提にして書かれています。※3

では核保有国の核兵器保有数ランキングを見てみましょう。と言っても核兵器を持っている国は、たった9カ国しか存在しません。
世界の核保有国

核兵器保有国の保有数ランキング
順位 核弾頭数
FAS SIPRI
1位 ロシア 6600発 7000発
2位 アメリカ 6450発 6800発
3位 フランス 300発 300発
4位 中国 270発 270発
5位 イギリス 215発 215発
6位 パキスタン 140発 140発
7位 インド 130発 130発
8位 イスラエル 80発 80発
9位 北朝鮮 20発 20発
全世界合計 14205発 14955発

2018年になった今でも残念ながら…この地球の上には14205~14955発もの核弾頭が存在しているのが現状なのです。

その中でも東西冷戦下での核開発競争の西の当事者であるアメリカの核弾頭が6450~6800発。東の当事者だった旧ソ連…その核兵器を引き継いだロシアの核弾頭が6600~7000発。この2か国の核弾頭数が群を抜いて多いことがわかります。

わかりやすくするために今度は比率…パーセント表記%に直してみましょう。パーセントに直すにあたっては北朝鮮の核弾頭数の推定を以前からおこなってきた実績のあるストックホルム国際平和研究所SIPRIのデータを使用しました。

核兵器保有国の保有数ランキング%
順位 核弾頭数
1位 ロシア 46%
2位 アメリカ 45%
3位 フランス 2.0%
4位 中国 1.8%
5位 イギリス 1.4%
6位 パキスタン 0.9%
7位 インド 0.8%
8位 イスラエル 0.5%
9位 北朝鮮 0.1%

世界に今も存在する核弾頭のうち91%はロシアとアメリカが保有している。

この事実を決して忘れないで下さい。

■世界の核実験回数の国別ランキング

続いて核実験をどの国が?どこで?おこなったかを見ていきます。まずは世界の核実験回数の国別ランキングです。元データは包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)です。※4

世界の核保有国

世界の核実験回数の国別ランキング
順位 核実験回数
1位 アメリカ 1032回
2位 ソ連 715回
3位 フランス 210回
4位 中国 45回
5位 イギリス 45回
6位 北朝鮮 6回
7位 インド 3回
8位 パキスタン 2回
全世界合計 2058回

全世界で今日までに行われた核実験は合計2058回

そのうち東西冷戦下での核開発競争の西の当事者であるアメリカの核実験の回数は1032回。

つまりアメリカ1国で全世界で行われた核実験の過半数を占めています。

次いで東西冷戦下での核開発競争の東の当事者だったソ連が715回。3位にフランスの210回。

中国イギリスは同じ45回ですが、より悪質な大気圏内核実験の回数が多い中国を4位としました。

わかりやすくするために今度は比率…パーセント表記%に直してみましょう。

世界の核実験回数の国別ランキング%
順位 核実験回数
1位 アメリカ 50%
2位 ソ連 34%
3位 フランス 10%
4位 中国 2.1%
5位 イギリス 2.1%
6位 北朝鮮 0.2%
7位 インド 0.1%
8位 パキスタン 0.09%

全世界でおこなわれた核実験の50%はアメリカがおこなったものです。34%がソ連。10%がフランス。

次に核実験が大気圏内で行われたのか?それとも地下核実験として行われたのか?に注目して分類してみます。

これは重要な分類で大気圏内…つまり地上や海上や空中で核実験を行えば当然、放射性降下物…いわゆる死の灰や黒い雨が地上や海に降り注ぎ、やがて人体も放射能で汚染されます。

私達の住む日本でも土壌を調べると微量のプルトニウムが検出されますが、それは1980年まで普通におこなわれていた大気圏内核実験の置き土産なのです。

なお地下核実験の場合、核爆発の影響が地中で完全に封じ込めできていれば問題はないのですが、失敗して大量の放射能漏れを起こしたケースもあるため油断はできません。

世界の核実験回数の国別ランキング
順位 核実験
大気 地下 合計
1位 アメリカ 217 815 1032
2位 ソ連 219 496 715
3位 フランス 50 160 210
4位 中国 23 22 45
5位 イギリス 21 24 45
6位 北朝鮮 0 6 6
7位 インド 0 3 3
8位 パキスタン 0 2 2
全世界合計 530 1528 2058

大気圏内核実験をおこなって地球規模の放射能汚染を振りまいていたのはアメリカ、ソ連、フランス、中国、イギリス。

つまり国連の安全保障理事会の常任理事国5カ国達なのです。

■核実験の世界地図

続いて核保有国8カ国が世界のどこで核実験をおこなったか?がひと目でわかる世界地図で見てみましょう。この世界地図は、国旗をみればどこの国がその場所で核実験をしたのかがわかります。なお世界地図は包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)が作成したものです。※5
世界の核実験場の分布地図の実施国名入り
地図の左側に点在するソ連の国旗赤い国旗は1箇所を除いてソ連(1箇所は中国)。地図の右側に存在するアメリカ国旗赤と青の国旗は星条旗、アメリカです。

ただ、この地図ですと核実験をした場所がどこの国に属するのか?がわかりません。

そこで日本語の世界地図を使って、核実験がおこなわれた場所に赤い丸の目印を付けた世界地図を作成してみました。なお小さな島国…しかし核実験の現場となったマーシャル諸島やキリバス、フランス領ポリネシアについては場所もわかるように国名や地域名を加筆してあります。
世界の核実験場の分布地図

続いて世界地図を地域ごとに切り取って詳しく見ていきましょう。核実験が行われた場所の名称の日本語訳については軍縮・不拡散促進センターの日本語訳をベースにしました。ただし別名のほうが一般的な場合、例えば北朝鮮の核実験が行われた場所を軍縮・不拡散促進センターはキムチェク(金策)としていますが豊渓里(プンゲリ)のほうが一般的なので豊渓里(プンゲリ)と記載しました。※6

■アジアの核実験場

まずはアジアの原爆の投下や核実験が行われた場所の地図です。
アジアの核実験場所の地図

日本
核爆弾投下 実施国
1 広島 アメリカ
2 長崎 アメリカ
北朝鮮
核実験場 実施国
1 豊渓里(プンゲリ) 北朝鮮

アジアの核実験場所の地図

中国
核実験場 実施国
1 羅布泊(ロプノール) 中国

羅布泊(ロプノール)では1967年に中国初の水素爆弾の核実験など合計45回の核実験が実施されました。

なお中国は他の核保有国が死の灰を世界中にまき散らす大気圏内核実験を1974年にやめ地下核実験に移行する中、1980年まで大気圏内核実験を凶行した国です。

インド
核実験場 実施国
1 ポカラン(タール砂漠) インド
パキスタン
核実験場 実施国
1 バローチスターン(チャガイ丘陵) パキスタン

あと気になる方もいると思うので書いておきますがアジアの地図の上の端っこ。モンゴルのすぐ北にある赤い丸は旧ソ連(今のロシア)が1977年に核実験をおこなった場所で、ロシア国内での地名はチタと呼ばれています。
アジアの核実験場所の地図なおカザフスタンなど旧ソ連だった中央アジアの国々については次の『旧ソ連諸国の核実験場の地図』で扱っています。

■旧ソ連諸国の核実験場

続いて旧ソ連諸国の核実験場です。旧ソ連諸国の中でも核実験場があるのはロシア、カザフスタン、ウクライナ、ウズベキスタン、トルクメニスタンの4カ国のみです。

下にある旧ソ連諸国の核実験場の地図の一番上の真ん中にある島に赤い丸がロシア領ノバヤゼムリヤ島で人類史上最大の水素爆弾(ツァーリ・ボンバTsar Bomba、爆弾の皇帝という意味)の核実験など合計130回の核実験がノバヤゼムリヤ島でおこなわれました。この核実験の回数は世界第4位です。
旧ソ連諸国(東ヨーロッパ)の核実験場所の地図縮尺の関係で地図にウズベキスタン、トルクメニスタンの名前がありませんが、地図の真ん中の下カザフスタンの南にあるのがウズベキスタン。ウズベキスタンのさらに南にある国がトルクメニスタンです。

ロシア
核実験場 実施国
1 ノバヤゼムリヤ島 ソ連
2 ムルマンスク ソ連
3 コミ ソ連
4 クラスノヤルスク ソ連
5 ヤクーツク ソ連
6 アルハンゲリスク ソ連
7 イバノボ ソ連
8 ペルミ ソ連
9 チュメニ ソ連
10 ケメロボ ソ連
11 イルクーツク ソ連
12 オレンブルグ ソ連
13 バシキール ソ連
14 ウラルスク ソ連
15 チタ ソ連
16 スタブロポリ ソ連
17 カルミック ソ連
18 アストラハン ソ連
19 パルクラソフスキー(ミサイル試験射場) ソ連

旧ソ連諸国(東ヨーロッパ)の核実験場所の地図さらに地図上カザフスタン国内の一番右上にあるのがセミパラチンスクで1953年ソ連初の水爆実験など世界第2位の合計463回の核実験がおこなわれた場所です。

カザフスタン
核実験場 実施国
1 セミパラチンスク ソ連
2 コスタナイ ソ連
3 アズギール ソ連
4 アクチュビンスク ソ連
5 マンギシュラーク ソ連
6 アラルスク ソ連
7 ツェリノグラード ソ連
8 ジェズカズガン ソ連
ウクライナ
核実験場 実施国
1 コロマツキー(ハリコフ州) ソ連

なおハリコフ州は、日本語ではハルキウ州と呼ばれることもあります。

ウズベキスタン
核実験場 実施国
1 ミリシュコール(カシュカダリヤ州) ソ連
トルクメニスタン
核実験場 実施国
1 マリ(マル州) ソ連

ついでに西ヨーロッパを見ていただくと核実験場は1つもありません。フランスとイギリスは核保有国ですが核実験は全部、植民地や植民地だった国々、海外領土、海外準県でおこなっています。
旧ソ連諸国(東ヨーロッパ)の核実験場所の地図

■アメリカの核実験場

次にアメリカ国内の核実験場を見てみましょう。アメリカには1945年7月16日に世界初の核実験トリニティ(Trinity)がおこなわれたニューメキシコ州のアラモゴード。地図上ではメキシコの文字の真上にある赤い丸です。
アメリカの核実験場所の地図

さらに世界最多928回の核実験が凶行されたネバダ州にあるネバダ核実験場。地図上ではアメリカ合衆国の左側(つまり西海岸)に赤い丸が4つ近距離でくっついて連なっている場所。ここの下から2つ目です。
アメリカの核実験場所の地図他の核実験場も合わせるとアメリカ国内には合計14の核実験場(公海上での核実験跡地も含む)があります。

これらの核実験のたびに発生した放射性降下物は、どこに降り注いだか?もちろんアメリカ国内全土に降り注ぎました。
甲状腺被ばく推定量mSv版(アメリカ国立癌研究所)
詳しくは安定ヨウ素剤国際基準+アメリカ甲状腺被曝地図の後半に解説があります。

なおアメリカ国内の核実験場を記載した下の地図の左上にポツンとある赤い丸はアメリカ合衆国のアラスカ州にあるアムチトカ島。左下にあるマーシャル諸島のところにある3つの赤い丸のうち一番右側にあるのがアメリカ合衆国領のジョンストン島です。
アメリカの核実験場所の地図

アメリカ
核実験場 実施国
1 アラモゴード アメリカ
2 ネバダ核実験場 アメリカ イギリス
3 アムチトカ島 アメリカ
4 ジョンストン島 アメリカ
5 ファロン アメリカ
6 中央ネバダ アメリカ
7 ネリス空軍射爆場 アメリカ
8 ライフル アメリカ
9 グランドバレー アメリカ
10 ファーミントン アメリカ
11 カールスバッド アメリカ
12 ハッティズバーグ アメリカ
13 南太平洋カリフォルニア・メキシコ西方沖 アメリカ
14 南太平洋カリフォルニア・メキシコ西方沖2 アメリカ

■オセアニアの核実験場

続いてオセアニアの核実験場を見てみましょう。まずはマーシャル諸島…正式な国名はマーシャル諸島共和国からです。諸島という漢字の下に赤い丸が2つ重なり合いながら並んでいますが。がエニウェトク環礁。がビキニ環礁です。
オセアニアの核実験場所の地図エニウェトク環礁は1952年にアメリカによる世界初の水爆実験を含む合計43回の核実験がおこなわれました。

ビキニ環礁も1946年からアメリカによる合計23回の核実験がおこなわれました。その中でもっとも悲惨な核実験となったのが1954年に行われたキャッスル作戦です。※7
キャッスル作戦のロメオ水爆実験
キャッスル作戦の中でも1954年3月1日におこなわれたブラボー水爆実験はアメリカが危険水域を誤って狭く設定してしまったため、結果として放射性降下物…いわゆる死の灰が近隣海域で操業していた漁船や240km以上離れたロンゲラップ環礁にまで降り積もりアメリカの核実験史上最悪の被曝被害をもたらしました。

この死の灰を浴びた漁船の中には私達の住む日本、静岡県のマグロ漁船…第五福竜丸もあります。第五福竜丸の乗組員でブラボー水爆実験から半年後に、被曝が原因で40歳で亡くなった久保山愛吉無線長は、未来を生きる私達にこんな遺言を託しています。

「原水爆の被害者はわたしを最後にしてほしい」

マーシャル諸島
核実験場 実施国
1 ビキニ環礁 アメリカ
2 エニウェトク環礁 アメリカ
3 南太平洋マーシャル諸島北西 アメリカ

オセアニアの核実験場所の地図

キリバス
核実験場 実施国
1 キリスィマスィ島マルデン島 アメリカ イギリス
2 南太平洋キリバス北東 アメリカ

キリスィマスィ島は別名クリスマス島。マルデン島は別名モールデン島やモルデン島とも呼ばれています。

続いて地図の右下にあるフランス領ポリネシアを見ていきましょう。フランス領ポリネシアというと聞いたことがない人が多いと思いますが、新婚旅行や真珠で人気のタヒチ島もフランス領ポリネシアです。

地図上のフランス領ポリネシアという文字の下に赤い丸は1つだけに見えますが実は2つ赤い丸が上下に至近距離で重なっています。がムルロア環礁、がファンガタウファ環礁です。
オセアニアの核実験場所の地図ムルロア環礁はフランスによって世界第3位の合計179回もの核実験がおこなわれた場所です。

ファンガタウファ環礁は1968年フランス初の水爆実験など合計14回の核実験がおこなわれました。

フランス領ポリネシア
核実験場 実施国
1 ムルロア環礁 フランス
2 ファンガタウファ環礁 フランス

オセアニアの核実験場所の地図

オーストラリア
核実験場 実施国
1 エミュー平原 イギリス
2 マラリンガ射爆場 イギリス
3 モンテベロ諸島 イギリス

オーストラリアでの核実験はすべてイギリスがおこなったものです。エミュー平原は別名イーミュー・フィールドやイミューとも呼ばれています。モンテベロ諸島はモンテ・ベロ島やモンテベリョ諸島とも呼ばれています。

■アフリカの核実験場

最後にアフリカの核実験場を見てみましょう。まずは地図の上のほうアルジェリアの国名の下に赤い丸が2つ並んでいますががレッガーヌ。がイン・エッケルです。
アフリカの核実験場所の地図

アルジェリア
核実験場 実施国
1 レッガーヌ フランス
2 イン・エッケル フランス

アルジェリアでの核実験はすべてフランスがおこなったものです。レッガーヌは1960年フランス初の核実験など合計4回の核実験がおこなわれました。なおレッガーヌは別名レガーヌ実験場。イン・エッケルは、別名エッカー実験場と表記される場合もあります。両方ともサハラ砂漠の中にあります。
アフリカの核実験場所の地図続いて地図の左下にある大西洋という漢字のの下にポツンとある赤い丸アメリカが大西洋の公海上でおこなった核実験の場所です。

南大西洋
核実験場 実施国
1 南大西洋南アフリカ南東沖 アメリカ

以上で核実験場の世界一周は無事完了です。

最後にもう一度、世界地図を眺めてみましょう。
世界の核実験場の分布地図

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※1https://www.sipri.org/sites/default/files/2017-09/yb17-summary-eng.pdf
※2https://fas.org/issues/nuclear-weapons/status-world-nuclear-forces/
※3http://www.iaea.org/newscenter/transcripts/2004/alahram27072004.html
※4http://www.ctbto.org/fileadmin/user_upload/pdf/Sipri_table12b.pdf
※5http://www.ctbto.org/map/
※6http://www.cpdnp.jp/pdf/002-07-003.pdf