内部被曝から身を守るにはどのようなことに気を付ければいいでしょうか。特に子ども達。 |
A回答(回答者:矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授)
■汚染された食べ物を食べない
内部被曝から身を守る一番基本的なことは、汚染された食べ物を食べないこと。
これに尽きます。食べ物についていえばね、国は「食べて応援しましょう」とか、消費者が放射能の汚染の可能性を考えて選ぼうとすると「風評被害はいけません」と言っていますが。
自分が食べたり飲んだりする物を選択し、自分の健康を守ろうとすることは当然の権利そのものであって、科学的にも正しいです。
売られる食品すべてに放射能検査の結果を表示していく。このことがなされていない現状では…放射能の移行の非常に少ない作物…そういうものもひっくるめて汚染地帯の食品を避けるという風潮が消費者の間に存在するのも仕方ないと思います。
それから特に海産物に注意が必要です。
詳細は出荷制限されていない海産物は安全?に書きましたが、2014年5月現在も下の表のように福島県、宮城県、岩手県、茨城県の海産物の一部に出荷制限※1がかかっているし、放射能汚染に県境など存在しないわけで。
岩手県スズキ クロダイ |
宮城県スズキ クロダイ |
茨城県スズキ コモンカスベ シロメバル マダラ イシガレイ ヒラメ |
福島県スズキ コモンカスベ シロメバル マダラ イシガレイ ヒラメ クロダイ アイナメ、アカシタビラメ、イカナゴ(稚魚を除く)、ウスメバル、ウミタナゴ、エゾイソアイナメ、カサゴ、キツネメバル、クロウシノシタ、クロソイ、ケムシカジカ、サクラマス、サブロウ、ショウサイフグ、ナガツカ、ニベ、ヌマガレイ、ババガレイ、ヒガンフグ、ホウボウ、ホシガレイ、ホシザメ、マアナゴ、マコガレイ、マゴチ、マツカワ、ムシガレイ、ムラソイ、メイタガレイ、ユメカサゴ、ビノスガイ、キタムラサキウニ、サヨリ |
北海道の太平洋側から千葉県の沖合までは、非常に海洋の放射能汚染が濃い海域が存在する。※2
つまり、それらの海域でとれた海産物は出荷制限がかかっていなくても汚染されている可能性がある。リスクを減らしたいのであれば、とても美味しい海産物だとしても子どもに食べさせるのは避けたほうがいいと思いますね。
現在の食品の放射能基準は健康を守るうえではまったく大きすぎます。少なくとも10分の1以下にしなければなりません。
現実問題として食品制限の1kgあたり100ベクレルは少なくとも10ベクレル以下にする必要があります。これで健康に対して安全だとは決して言えませんけれども、健康を守れる値(あたい)にして、それ以上は全部排除しなければなりません。
国が非常に厳しい目で規制しない限り、食を通じての健康被害が必ず出ます。チェルノブイリ事故後のヨーロッパなどの健康被害を日本は厳しい参考事例として受け入れなければなりません。
現実の食生活のうえで被曝を少なくするためには、
(1)水洗いを丁寧にする
(2)魚はエラや内臓は決して食べない
(3)茹でることのできる食品は茹でる
■マスクをする
今の福島第一原発は、空気中に毎時…1時間あたり1000万ベクレルの放射性物質の放出が続いている…とても危険な状況です。
この状況が今なお、新たな汚染を住民サイドにもたらしています。福島に限らず日本の広範囲の地域で、呼吸による内部被曝の危険は、放出され続けている放射性物質によることと、すでに放出された放射性物質を含んでいる土ぼこりによります。
これは1μm(マイクロメートル)まで遮断できるマスク…1μm(マイクロメートル)は単位を変えるとこれは1ミリの千分の1…0.001mm(ミリメートル)、0.0001cm(センチメートル)ですが…1μm(マイクロメートル)まで遮断できるマスクが割と安く売られていますので、土ぼこりによる内部被曝は基本的に防護できます。
ただし新たに福島第一原発から放出された新鮮な放射性物質のぼこりは、粒径が1μm(マイクロメートル)に達しないものが圧倒的に多いですから、マスクをしても特殊な軍隊が使っているようなマスクでない限り、放射性物質を吸い込んでしまうんですけれどもね。
それでもマスクをしないよりも、マスクをしていたほうが被曝量は、はるかに少なくなります。
1.汚染された食べ物を食べない。
2.マスクをする。
これが内部被曝から身を守るために気を付けなければならないことです。
■子ども達を内部被曝から守る
しかし放射能感受性が強い子ども達については…今の福島全域の放射能による汚染状況を見ると、ご承知のように日本政府が法令で定めた1年間ミリシーベルトを超える地域がたくさんあります。
放射能汚染地帯に住んで子ども達を内部被曝から守る…やっぱり現実的には守りきれない部分があるんですね。
子ども達は自分で住む場所を決めることができません。放射能にもっとも敏感な子ども達は大人の責任として、被曝回避のために疎開させることが必要です。日本の将来のため安全なところで勉強してもらう配慮が必要です。本当は大人の疎開も必要なんですが。
沖縄県でも被災地の子どもを受け入れられる体制を作れたらと考えています。
+編集後記
今回の矢ケ崎克馬教授の記事…福島原発事故由来の放射能から、自分や子ども達を守る…放射線防御の2つの要(かなめ)をわかりやすく解説してくれていて評判いいです。すでにFacebookのいいね!も3500を超えました。
興味深かったのは、福島県や岩手県や宮城県など東北地方よりも、関東地方や東京でシェアしてくださる人が圧倒的に多かったことです。特に東京は放射能リテラシーが高い人が多く、九州産の野菜が多く売っている関東の某スーパーの話やマスクの製造工場まできちんと調べて買った情報など今回の記事に+αしてシェアして下さったようです。私も勉強になりました。
1.汚染された食べ物を食べない。
2.マスクをする。
この2つの大切なことは一見「なんだ当たり前じゃん!」と思うけど、原発事故から時間が経つにつれて…みんなが…ついつい…おろそかになってきてしまうことですからね。
汚染された食べ物を食べないことも、マスクをすることも、誰でもできる簡単なことなんだけど、でも簡単なことだからこそ逆に難しいのでしょうね。
私も矢ケ崎克馬教授の今回の記事を読んで、もう一度自分の生活を顧みようと思います。
矢ケ崎克馬教授が最後に話されている被爆疎開について。
沖縄県は、夏休み冬休みを使った保養や自主避難者への支援など、かなりがんばっている印象を受けます。私個人の感想ですが全国で一二を争うほどの支援体制だと思います。
じゃあ矢ケ崎克馬教授ご指摘の疎開…この疎開は太平洋戦争中の学童疎開を想定されていると思いますが、疎開はどうか?といえば、他の都道府県も同じでしょうがまったくないです。
夏休み冬休みを使った保養でさえ、莫大なお金とボランティアが必要だし、あまりの大変さに1年で保養プロジェクトを終了する団体もけっこうありました。
この保養プロジェクトの現状を見て、そして考えると民間のボランティア団体や有志ができるのは保養が限界です。
となると国策として国費で、被曝量を減らすために小学生、中学生を被曝疎開させるべきという議論が必要になってくると思われます。
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※1http://www.mhlw.go.jp/shinsai_jouhou/shokuhin.html
※2http://www.asrltd.com/japan/plume.php