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 更新日:2018年12月13日   公開日:2018年12月13日 

南相馬市の死亡率増加は「帰還」の危険性を物語るのか?

矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授
琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬

【1】南相馬市では、たくさんの市民がいったん避難してやがて帰還しました。

南相馬市の死亡率などを具体的に触れることができましたので、まだデータ収集中の中途の発表ですが、ご報告します。この議論のデータソースは福島県のホームページなどです。※1

南相馬市の人口は図1に示す通りです。
南相馬市の人口の増減2010年から2017年のグラフ

年々の人口と死亡数の数値は表1に示します。

表1南相馬市の人口と死亡者数
西暦 人口 死亡数
2010年 70878人 819人
2011年 66542人 913人
2012年 65102人 762人
2013年 64144人 774人
2014年 63653人 776人
2015年 57797人 845人
2016年 56979人 836人
2017年 55404人

人口は一意的に減少しています。特に2014年から2015年へ急減しています。2015年は死亡者が845人ですので(図2)、2014年から2015年の急減の内容は5011人の転出者等の死亡以外での減(正確には、転出者マイナス(転入者+出生者等))があることとなります。

2015年の人口が57797人ですので、このうちの8.7%の大量減は死亡以外での減です。

この人口はあくまで住民票レベルの人口で、市内の実人口ではありません。

南相馬市立総合病院のHPに院長及川友好氏のあいさつがありますが、その中に次のようなくだりがあります。

2011年3月11日の東日本大震災、その後の原発事故により、南相馬市の人口は一時7万人から1万人以下に減少しました。平成27年10月現在、6万4千人(うち震災以前からの市民は4万8千人)まで回復していますが、1万人以上が依然として市外で避難を続けており、その多くが若い世代のため、市内では少子高齢化が急速に進んでいます。市内の仮設住宅、借り上げ住宅に居住する市民は8千人を超え、その多くが高齢者であることから、健康面でのサポートが重要な課題になっています。

南相馬市の実人口は2011年には1万人以下にまで減少し、2015年には6万4千人(表1に記載された人数では2014年の人数に近似)まで回復していると述べています。典型的にいったん避難して帰還した人が大量に暮らしているという街の動的実体が浮き彫りにされます。

図1および表1の人口はあくまで住民票に登録されている人口であり、実人口ではありません。したがって、次に示す死亡者数はやはり住民票登録数のうちの死亡者であり、市外に避難している人を含む数値です。

【2】南相馬市の死亡率は市民が帰還してから増加しています。

南相馬市の死亡者数は図2に示します。

南相馬市の死亡者数2010年から2017年のグラフ

死亡者数は、市の人口減少とは逆に2014年から2015年にかけて急増しています。2011年には地震・津波による死亡者が含まれています。

図3には10万人当たりの死亡者数がプロットされています。
日本、福島県、南相馬市の死亡率2010年から2017年のグラフ

10万人当たりの死亡率(図3には10万人当たりの死亡者数がプロットされています。)を見ますと、まず、2011年の国の全死亡数は2010年以前の予想直線からはほぼ10万人の死亡者増加(総人口およそ1億2千8百万人)があります。東日本大震災による死亡者数(死亡者数+行方不明者数)は18446人ですので、8万人以上の東日本大震災以外での死亡者が居ます。この数は大問題ですが政府や専門家は沈黙の闇です。

全国総死亡率の変化は図に示すような経過をたどりますが、2016年からさらに死亡者増加に転じ、2017年での2010年以前からの予想直線からのずれはほぼ5万人となっています(ここではあくまで直線近似に寄ります。直線は最小二乗法で決めています)。2011年以後の7年間で30万人以上の死亡者増がグラフからは勘定されます。しかしこれらは全く報道されていません。

福島県の死亡率は緑色でプロットしてありますが、2011年以降の死亡率増は全国の割合よりはるかに高いものです。放射能汚染領域にある福島県は放射線被曝により死亡率が高くなっていることを物語ります。復興・帰還の陰に報道されていない危険な実態があります。

3.11以降福島県を中心に全国的に放射線がらみの死亡者が増加していることを図3には示されています(再掲)。
日本、福島県、南相馬市の死亡率2010年から2017年のグラフ
図3で、南相馬市の死亡率は赤いプロットで示します。図1の人口で図2の死亡者数を割り、それを10万人当たりに基準化したものです。2014年までは福島県の死亡率とほぼ同じですが、2015年で急増しています。これを前述した死亡以外での人口急減がありますのでそれを考慮して(人口が変わらないとして)補正計算したのが、図中の赤い丸にXをしたものです。補正値も福島県の死亡率を明瞭に上回るものです。

なぜ゙このような変化が生じたのでしょうか?

放射能の健康被害は直ぐ現れるものとある程度期間が経ってから現れるものがあることはよく知られているところですので、数年遅れで死亡率が上昇することは一般概念で理解できます。しかしグラフに現れているこの死亡率急増はそのような事情や考察での現れ方とは異なると思います。

市民が南相馬市に帰還した時期の後で死亡率が急上昇しているのではないかと思われます。

南相馬市の実人口は図1の住民票数に関わらず2011年には1万人を切る(南相馬市立総合病院院長談話:同病院HP)まで減少し、その後回復しています。避難者の皆さんがいつ南相馬市に帰還したのかをぜひ知りたいのですが、帰還のきっかけは国や県の「復興」政策が関与しているのではないかと推察されます。

2014年から福島県の帰還政策が始まっていますから、おそらく2014年くらいに避難者の皆さんが一斉に帰り始めたのではないかと推察します。南相馬市では2014年から2015年にかけて約5000人もの人口減少がありますが、これは県などの「帰還政策」が進む中でその政策と対応する形で、住民票自体を移転させる「避難の固定化」が起こったのではないかと推察します。記載する期間中、他の年も一貫して減少を示しますが、それらは徐々に減少する傾向です。

その仮定に立つと南相馬市の死亡率が2011年から2014年までほぼ福島県のそれと同じ期間は、市のほとんどの人が避難しており、南相馬市より放射能汚染の低い土地(福島県内のより汚染が低い場所あるいは他府県)で暮らしている条件が反映した死亡率として理解できます。細かく見ますと、2012年と2013年はむしろ福島県より若干低い値を示しておりますが、2014年は福島県と同率です。

再言しますが、2015年から急増して福島県の死亡率より高くなった原因が大問題です。2015年では市の人口が急減しておりますが、それは前述したように住民票の転出によると見なせば理解できます。他の大多数の方はそれ以前か同時期に帰還しているのではないかと推察されます。

そうすると南相馬に帰還することにより2015年、2016年の死亡率の増加がもたらされたと理解できます。これは危機的な推測です。

何故危機的かといいますと、すでに帰還政策が進み、高汚染地域でも多くの「帰還者」が居住する状態となっています。いったん避難した人が高放射能汚染地域に帰還する。そうすると死亡率が増加する。南相馬の場合だけでなく、他の市町村でもいったん避難した後に帰還した方にも同じような危険が迫っているのではないか、という恐れの危機感です。

さらに、福島県に在住する方の死亡者増が必然的に懸念されるのです(図3では10万人当たりと基準化されているので、10万人当たりの死亡率増は全国の増加よりはるかに多く、汚染地での生活の危険が事実として現れています)。

住民の動向の詳細が分かればもう少し具体的な議論が可能となります。死亡には他の要因も加わりますが、大局的には帰還と放射線被ばくの関連で理解ができ、それが今進められている「帰還」強制(?)の悲劇を物語るところとなります。命を削って「復興」と「帰還」を迫るのは日本政治の暗雲を象徴しています。

なお、避難すると健康被害が低減するという報告は2014年の統計として図4に示されています。

急性心筋梗塞による日本と福島県の死亡率と避難の効果

モニタリングポストは各地の放射能汚染空間線量の公式値を示すものとして扱われてきました。しかし、今モニタリングポストの撤去が原子力規制庁により進められようとしています。モニタリングポストは住民の一種の安心のよりどころとなっている側面がありました。

ところがモニタリングポストは「正しい方法で測られた」実際に住民が受けている空間線量のほぼ半分の値しか示していないという大問題を抱えています。※2

「国や福島県が発表する空間線量の値をおよそ2倍しないと真の空間線量とならない」という恐ろしい状態が私たちの懸念に追い打ちをかけます。

その結果の一部を下図図5に示します。

福島県のモニタリングポストは真値の半分しか示さないケースがあった

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※1http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21005a/hofukubu-database.html
※1http://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21005a/hofukubu-database-kako.html
※2矢ヶ﨑克馬:真値の半分しか表示しないモニタリングポスト、日本の科学者53、pp100~(2018)。

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