福島県内の放射性ヨウ素汚染地図を時系列で、発表された順番に見ていきましょう。全部で4枚の放射性ヨウ素汚染地図をご紹介します。

■【1枚目】2011年9月21日公表(文部科学省)※1
まず福島原発事故の半年後、2011年9月21日に文部科学省が発表した放射性ヨウ素131土壌汚染マップ。この地図見ていただいてわかる通り、真っ白です。白は放射能が来なかったんじゃなくて測定できなかった地域。そうです、穴だらけの地図です。そしてこの地図が唯一、地上での実測に基づくものです。つまり、これ以外のヨウ素汚染地図はこれを元に推定部分を付け足したり、あるいは他のデータを元に計算で作られたものです。
放射性ヨウ素131土壌汚染マップ(2011年9月21日)
地図を見る際の注意点として紫色の部分は、『非可住地域』と言って誰も人が住んでいない地域を意味し放射能汚染とは無関係です。地図の右側にある四重丸の真ん中にある×が爆発した福島第一原発です。

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この汚染地図は福島原発事故から3ヶ月後、2011年6月14日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしています。後から2枚目にご紹介する航空モニタリングによる放射性ヨウ素汚染地図が、2011年4月3日時点の汚染を現わしていてもっとも時期が早いですがそれ以外の地図はすべて2011年6月14日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしているものです。

ちょっと見にくいので福島原発周辺を拡大します。
youso2
×がある福島原発の周辺に赤い三角が確認できると思います。このが高濃度の放射性ヨウ素の汚染があった場所でと汚染が弱くなっていきます。

福島原発周辺から赤い三角や丸を探してみると左上と真下方向に赤が点在していることに気づきます。左上は双葉町、浪江町、飯館村、南相馬市など北西方面。真下は、大熊町、富岡町、楢葉町、広野町方面へ南下しています。


■【2枚目】2013年6月27日公表(日本原子力研究開発機構)※2
福島原発事故から2年以上たった2013年6月27日に発表された、このヨウ素汚染地図は、アメリカのエネルギー省が福島原発事故から20日ほど経過した2011年4月2日、3日の2日間に福島原発周辺で実施した航空モニタリングのデータを元に日本原子力研究開発機構が作成したものです。

ですので4月2日と3日に飛行機が飛んだ部分…具体的には福島県でも原発のある海沿いの浜通り地方のいわき市より北と、浜通り地方の左隣にある中通り地方の一部しか、地図が存在しません。
放射性ヨウ素131汚染地図(2013年6月27日)
この汚染地図は2011年4月3日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしたもので、今確認できる放射性ヨウ素汚染地図【福島県版】でもっとも早い時期の汚染がわかるものです。

このヨウ素汚染地図と、一番最初にご紹介した地上での実測に基づくヨウ素汚染地図は『よく一致』するとの見解を日本原子力研究開発機構自身が表明しています。つまり完全に一致するわけではないのでしょうね、あくまでデータを元に計算で求めた地図ですし。

ついでにヨウ素汚染地図とセシウム汚染地図の比較画像。共通点としてはヨウ素もセシウムも左上の方向…つまり北西に向かって最大規模の放射能が降り注いだことがわかります。しかしヨウ素のほうは別ルートでさらに真下方向、南にも向かったことがわかります。
ヨウ素131とセシウム134汚染比較

■【3枚目】2013年7月1日公表(原子力規制委員会)※3
福島原発事故から2年以上たった2013年7月1日に発表されたこの地図は、一番最初の地上での実測に基づくヨウ素汚染地図に漏れていた6箇所の測定地点が追加されただけのものです。赤い丸があるのが追加部分。なお、この汚染地図も2011年6月14日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしています。
放射性ヨウ素131汚染地図(2013年7月1日)

ちょっと見にくいので地図をさらに拡大にします。注目すべきは左側に2つある追加部分です。
会津地方の喜多方市、只見町が新たに追加されてます。これで会津地方は、従来から発表されている会津若松市と合わせて3箇所の放射性ヨウ素の土壌汚染のデータがわかったことになります。しかしなぜ2年もたってから…。3箇所ともですから201~500ベクレル/m2(1平方メートルあたりの土壌に何ベクレルある?)…決して低い濃度の汚染ではなかったことがわかります。
放射性ヨウ素131汚染地図(会津地方)



■【4枚目】2013年7月1日公表(日本原子力研究開発機構)※4
福島原発事故から2年以上たった2013年7月1日に発表されたこの地図…1つ前のヨウ素汚染地図とまったく同じ日に発表してます。この地図は半減期の8日と短いため今ではきれいさっぱり消えてしまったヨウ素131の代わりに、半減期1570万年のヨウ素129を調べ、穴だらけのヨウ素131汚染地図をできるだけ埋めようというものです。なお、この汚染地図も2011年6月14日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしています。

四角がヨウ素129の調査から推定され追加された箇所です。この調査のおかげで福島原発×から左上と真下へ向かう放射性ヨウ素の赤い汚染が、点から線になりました。やはり放射性ヨウ素は北西、そして南への2方向の流れがあったようです。さらに、この地図の最大の特徴は、茨城県の北部の調査も行われている点です。北茨城市に緑色のが1箇所あり1000~2000ベクレル/m2の高濃度の放射性ヨウ素汚染があった可能性が見えてきました。
放射性ヨウ素129汚染地図(2013年7月1日)
ん?そういえば…

福島県を構成する3地方…山沿いにある会津地方、真ん中にある中通り地方、原発のある海沿いの浜通り地方のうち、会津地方が見えない地図に突然なってしまいましたね。2枚目にご紹介したヨウ素汚染地図は航空機モニタリングで飛んだ2日分だけでしたら、飛行しない会津地方や中通り地方を省くのはわかります、合理的です。

でもこの地図は測定地点が1箇所だけあった会津地方をなぜか省いています、特に理由もなく。

というか会津地方の地図を見せたくないのではなく、会津若松市のデータを見せたくないのだと思われます。

事実、会津地方の地図を外すことで、会津若松市のデータだけ忽然と消えています。

1つ前の地図では原発事故から2年も経ってから会津地方の喜多方市、只見町が新たに追加されました、原発事故のほとぼりが冷めつつある2年もたってから。今回の地図では会津若松市のデータだけ忽然と消えています。そして両方の地図の公表はまったく同じ2013年7月1日

もし喜多方市、只見町の追加のあったヨウ素131汚染地図が先に公表されれば、後から発表されるヨウ素129推定の汚染地図では、会津若松市、喜多方市、只見町の3箇所も消えた会津地方が目立ってしまいます。

もしヨウ素129推定の汚染地図が先で、後から喜多方市、只見町の追加のあったヨウ素131汚染地図を公表すれば会津地方のヨウ素の土壌濃度がマスコミに注目して報道され、先に公表したヨウ素129推定の汚染地図から会津若松市が消えたことが再び蒸し返されてしまいます。

同じ日に発表すれば報道や注意も分散されるし、ただ漏れていたデータ…喜多方市、只見町などが6箇所だけ追加された地味な地図を報道するより、最新技術のヨウ素129推定の汚染地図のほうがマスコミも注目するでしょう。そして最新技術のヨウ素129推定の汚染地図からひっそりと会津若松市のデータだけが消えても、とるに足らない枝葉末節のこととして黙殺するでしょう。

さらに6箇所だけ追加された相変わらず穴だらけの地図より、最新技術のヨウ素129推定でモザイク画と化した汚染地図のほうを、福島県民は最新の放射性ヨウ素汚染地図として認識するでしょう。そうすると会津若松市が消えたことも、発表と同時に中古品と化した別の地図に喜多方市、只見町が追加されたことも目立ちません。両方ともヨウ素汚染地図で同じ日に発表ですから、そもそも1枚の地図しか発表されてないと勘違いする人もいるでしょうし。

つまり佐藤雄平福島県知事のご出身地の会津地方については、放射性ヨウ素が降り注いだという事実を指摘するのはタブーだということでよろしいでしょうか。


■福島県市町村別放射性ヨウ素土壌濃度推定一覧表※5
実は、最後の4枚目の放射性ヨウ素汚染地図と一体をなす資料には付録がありまして、その付録の1つに『ヨウ素131の福島県市町村別土壌濃度推定一覧表』の資料があるんです。つまり上の地図でとあるけど具体的にいくらなの?ということが書いてある一覧表です。数字を比較する場合は地図より一覧表のほうが見やすいです。なお、この一覧表も2011年6月14日時点の放射性ヨウ素の汚染を現わしています。

もちろん上記で指摘した通り会津地方のデータは一切ありません。ただ実測に基づく1枚目と3枚目の地図のデータが会津若松市、喜多方市、只見町についてはありですから201~500ベクレル/m2の間ですので一覧表にある浜通り地方や中通り地方の市町村との比較は可能です。

なお、先ほどの最後の4枚目の地図を見ていただくとわかるように同じ市町村に複数の測定地点があり、かつどの測定地点かは公開されていませんので、同一市町村の測定地点のなかで最高値と最低値のみピックアップして一覧表を再構成しました。

例えば天栄村ですと3つの測定地点があり371、391、535Bq/m2ですので最低値は371、最高値は535として2つの測定地点のデータのみ記載しています。

一覧表のセルの色は、表を見やすくするため地図の色と一部変えました。色と汚染濃度は以下の通りです。

…5001Bq/m2以上
…2001~5000Bq/m2
…1001~2000Bq/m2
…501~1000Bq/m2
…201~500Bq/m2
□…40~200Bq/m2

≪福島県放射性ヨウ素土壌濃度推定一覧表≫
2011年6月14日時点、37市町村対象
市町村名 ↓最低値 ↑最高値
双葉町 6817 28938
浪江町 139 28197
富岡町 285 23048
大熊町 2532 21080
川俣町 252 5153
飯館村 796 4980
南相馬市 265 4305
楢葉町 562 3481
川内村 118 3402
田村市 92 2644
福島市 343 2570
いわき市 43 2414
伊達市 45 2260
広野町 506 1925
葛尾村 689 1584
相馬市 181 1154
北茨城市【茨城県】 317 1134
二本松市 228 1071
須賀川市 307 879
本宮市 469 866
高萩市【茨城県】 479 836
郡山市 109 753
白河市 144 646
天栄村 371 535
三春町 501 501
丸森町【宮城県】 223 460
大玉村 407 407
中島村 380 380
日立市【茨城県】 370 370
西郷村 225 326
棚倉町 156 252
古殿町 132 221
平田村 182 182
玉川村 158 158
小野町 85 145
石川町 142 142
鮫川村 61 114

見ていただいてわかる通り、同じ市町村内でも放射性ヨウ素の汚染が低い所と高い所で数字がまったく違う市町村がけっこうあり、浪江町のように200倍以上の差がある所さえあります。

これを考えると全国で北海道、岩手県に次ぐ3番目の広さをもつ福島県内で、一人一人の福島県民が当時、どれくらい放射性ヨウ素で被曝したのかを個別に把握することは事実上不可能でしょう。

ところで2011年6月14日より前の放射性ヨウ素汚染について、地図とまではいかなくても…実測に基づく資料は存在しないのでしょうか?

あります。3月11日に近づくほど対象市町村が少なくなってしまいますが、今回は4つの一覧表と1つのグラフをご紹介します。


【1つ目】■2011年4月13日公表(福島県災害対策本部)※6

1つめが福島原発事故から1ヶ月たつ少し前2011年4月5日~6日に福島県内の16市町村の小学校で実施された土壌とダスト(ほこり)を対象とした放射性ヨウ素の汚染データです。

注意点としてはさっきの一覧表はBq/m2(1平方メートルあたりの土壌に何ベクレルある?)だったのに対して今回の一覧表の土壌はBq/kg(1キログラムあたりの土壌に何ベクレルある?)、ダストはBq/m3(1立方メートルあたりの空気中に何ベクレルある?)となります。

…5001Bq/kg以上
…2001~5000Bq/kg
…1001~2000Bq/kg
…501~1000Bq/kg
…201~500Bq/kg
□…0~200Bq/kg

≪福島県小学校の放射性ヨウ素一覧表≫
2011年4月5~6日時点、16市町村対象
小学校名 土壌 ダスト
川俣町立山木屋小学校 29944 0
浪江町立津島小学校 20391 2
福島市立第一小学校 8193 1
二本松市立岳下小学校 6216 2
いわき市立四倉小学校 6183 4
福島市立大久保小学校 5945 0
伊達市立保原小学校 5653 0
いわき市立平第一小学校 4850 4
郡山市立金透小学校 3096 1
南相馬市立原町第一小学校 2822 8
郡山市立熱海小学校 1700 0
相馬市立中村第一小学校 1588 0
田村市立船引小学校 1573 1
いわき市立勿来第一小学校 1255 4
須賀川市立第二小学校 1236 0
白河市立白河第一小学校 717 0
平田村立蓬田小学校 597 0
会津若松市立鶴城小学校 497 0
喜多方市立第一小学校 259 0
南会津町立田島小学校 0 0

【2つ目】■2011年6月7日公表(文部科学省)※13

2つめが福島原発事故直後の2011年3月22日に福島県内3市町村で実施された土壌を対象とした放射性ヨウ素の汚染データです。

注意点としては黒く塗った空欄■は、調査されなかったことを意味し放射性ヨウ素が検出されなかったわけではありまあせん。

…5001Bq/kg以上
■…調査されなかったため不明

≪福島県放射性ヨウ素一覧表≫
2011年3月22日時点、3市町村対象
市町村名 土壌 雑草
浪江町手七郎交差点 740,000
川俣町川俣農業振興公社入口 48,000
二本松市田沢小学校前バス停 36,000



【3つ目】■2011年4月12日公表(文部科学省)※8

3つめが福島原発事故直後の2011年3月16日~19日に福島県内6市町村で実施された土壌と植物を対象とした放射性ヨウ素の汚染データです。

注意点としては黒く塗った空欄■は、調査されなかったことを意味し放射性ヨウ素が検出されなかったわけではありまあせん。なお、2箇所分のデータがある場所については高いほうのみを記載しました。

…5001Bq/kg以上
■…調査されなかったため不明

≪福島県放射性ヨウ素一覧表≫
2011年3月16~19日時点、6市町村対象
市町村名 土壌 植物
飯館村 160,000
浪江町 100,000
大玉村 43,000
小野町 22,000
本宮市 21,000
西郷村 12,000



【4つ目】■2011年6月7日公表(文部科学省)※7

4つめが福島原発事故直後の2011年3月16日~17日に福島県内9市町村で実施された土壌と雑草を対象とした放射性ヨウ素の汚染データです。

なお、この雑草のデータの『試料名』は雑草…しかし『種類又は部位』には葉菜とあります。葉菜(ようさい)とは主に葉の部分を食用とする野菜…具体的にはホウレンソウやキャベツなどのことです。雑草なのか?葉菜なのか?

下記の一覧表にある採取場所を見ると公共施設が多いですので、野菜は栽培していないでしょうから雑草の葉っぱの部分をメインに採取したと考えられます。どのみち植物については放射能を生体濃縮してしまうことが多いので、飯舘村柔剣道場のように土壌に比較して7.6倍もの高濃度汚染さえあります。

注意点としては黒く塗った空欄■は、調査されなかったことを意味し放射性ヨウ素が検出されなかったわけではありまあせん。なお、2日分のデータがある場所については高いほうのみを記載しました。

…5001Bq/kg以上
■…調査されなかったため不明

≪福島県放射性ヨウ素一覧表≫
2011年3月16~17日時点、9市町村対象
市町村名 土壌 雑草
浪江町国道114号津島 1,440,000
いわき市いわき合同庁舎 1,310,000
相馬市国道115号けやき橋 435,000
飯舘村村民の森あいの沢 336,000 1,220,000
飯舘村柔剣道場 151,000 1,150,000
川俣町山木屋 727,000
福島市大波城跡 156,000 429,000
川俣町川俣中央公園 273,000
二本松市東和支所 35,800 152,000
田村市田村市役所 99,300
相馬市馬稜公園 15,100
川俣町国道459号入口 12,500 86,600
小野町小野町役場 50,400



■シンチレーションサーベイメータによる核種と放射線量※9
福島市、いわき市、国見町、川俣町の4市町村は床次眞司弘前大学教授のシンチレーションサーベイメータでの計測結果があるので、どの放射性物質がどれくらい放射線を出していたかがわかります。このデータも2011年3月17~19日時点と福島原発事故直後のものです。市町村名の右のかっこ内にあるのは福島第一原発から何kmか?です。

注意点としては、それぞれのグラフの左側にあるメモリが違います。国見町、川俣町はメモリの上限が3マイクロシーベルト/1時間で同じですが、福島市の上限は8マイクロシーベルト/1時間、いわき市は0.6マイクロシーベルト/1時間とバラバラです。

オレンジ色が問題視されている放射性ヨウ素131です。2011年3月17~19日時点で福島第一原発から44キロの距離にあるいわき市、46キロの距離にある川俣町、63キロの位置にある福島市、67キロの位置にある国見町の地表まで放射性ヨウ素131が到達していたことがわかります。
シンチレーションサーベイメータのデータ
注目すべきは2011年3月17~19日時点のデータの右側にある、さらに半月後の2011年4月25~27日時点のデータです。すべての市町村でシンチレーションサーベイメータでは、もはや、放射性ヨウ素131が検出できなくなっています。

放射性ヨウ素131は8日で1/2、16日で1/4に、24日で1/8に、32日で1/16、40日で1/32、48日で1/64、56日で1/128、64日で1/256、72日で1/512、80日で1/1024、88日で1/2048。

96日で1/4096…という具合に放射性ヨウ素131は短期間で半減を繰り返し減っていきます。

思い出して下さい、今まで見てきた放射性ヨウ素汚染地図4枚のうち3枚は2011年6月14日時点のものでした。2011年6月14日は、東日本大震災から95日目です

4千分の1に半減しまくった状況で、あの悲惨な状態なのです。一覧表で一番最初にご紹介した福島県市町村別ヨウ素土壌濃度推定一覧表だって同じく2011年6月14日時点のものです。4千分の1に半減しまくった状況で、あの悲惨な数字なのです。

逆にその一覧表のセルの数字すべてを4千倍にすると、記載された福島県内のすべての市町村が真っ赤になってしまいます。最高値だけでなく最低値も含めてすべて5000Bq/m2越えです。

この深刻な放射性ヨウ素による放射能汚染の最中、日本政府と福島県は、ほとんどの福島県民を避難させず置き去りにしました。

それなのに、なぜ?この放射性ヨウ素による甲状腺被曝と、今、福島県の子供達や大人達に多発し始めている甲状腺がんとの因果関係を否定できるのか…私には、さっぱり理解できません。

福島県が公表している小児甲状腺がん及び疑いの患者数だけでも、福島原発事故からまだ3年も経っていない2013年12月31日現在74人もいるのです。その中でも川内村は275人に1人、大玉村は679人に1人が小児甲状腺がん及びその疑いと医師の診断を受けているのです。※10

そもそも小児がん全部合わせても、こんな高い割合じゃなかったでしょう。この割合で考えると私の小学校や中学校の同級生は少なくとも3、4人は小児甲状腺がんになっていないとおかしいです。もちろん誰一人、小児甲状腺がんにはなっていません。

74人の患者を市町村別に分類し、その市町村の子供達の何人に一人が発病したか?を色分けしたのが下記の地図となります。地図の左側にある会津地方が真っ白なのはまだデータが公開されていないためです。※さらに詳しい市町村別の発病率の一覧表は小児甲状腺がん急増?福島県の新事実にあります。

…1人~999人に1人が発病
…1000人~1999人に1人が発病
…2000人~2999人に1人が発病
…3000人~3999人に1人が発病
…4000人~5999人に1人が発病

福島県小児甲状腺がん患者数2013年12月31日現在
地図の右側の真ん中にある×が福島第一原発です。この福島原発から左上の方向…つまり北西に向かってオレンジ色の小児甲状腺がん多発地帯があるのが分かります。このオレンジ色の多発地帯は、子供達のうち1000人~1999人に1人が発病したことを意味します。このオレンジ色の多発地帯…見覚えがありませんか?そうです、この地図です。
ヨウ素131とセシウム134汚染比較
さきほど2枚目の汚染地図をご覧いただいた際に、ついでにご紹介した日本原子力研究開発機構が作成した放射性ヨウ素汚染マップとセシウム汚染マップです。放射性ヨウ素もセシウムも福島第一原発から左上の方向…つまり北西に向かって最大規模の汚染地帯が存在しました。

左側のヨウ素汚染地図をご覧下さい。見てのとおり放射性ヨウ素については福島第一原発から左上の方向…つまり北西以外にもう1ルート、真下方向、南にも高濃度の汚染地帯がありました。しかし2013年12月31日現時点では、南方向については福島県の他の地域と比べ低い発病率となっています。

放射性ヨウ素と放射性セシウムの高濃度汚染地帯の重なる所に、小児甲状腺がん多発地帯がある。

でも1つ疑問が生じます。放射性ヨウ素が甲状腺に集まるのは世界的に有名な話ですので知っていますが、そもそも放射性セシウムは甲状腺に集まるのでしょうか?

実は子供達の場合、放射性ヨウ素だけでなく放射性セシウムも甲状腺に大量に集まるということがベラルーシの著名な医師ユーリ・バンダジェフスキーの研究論文※11で明らかになっています。下記のグラフは、人間の臓器別のセシウム蓄積量を大人と子供に分けて記録したものです。青が大人、赤が子供達です。
ユーリ・バンダジェフスキー臓器別セシウム蓄積量
左から数えて4番目が甲状腺です。赤の子供達の甲状腺は、大人の3倍以上のセシウムを蓄積し、しかも他の臓器と比べても圧倒的に放射性セシウムを集めていることが一目瞭然です。

つまり放射性セシウムも、放射性ヨウ素と同じように子供達の甲状腺に蓄積されやすい

ということは原発事故から3年以内の早期の小児甲状腺がんの発病は放射性ヨウ素だけでなく放射性ヨウ素と放射性セシウム両方の放射能汚染が関係しているのかもしれません。

原発事故から3年以内の早期のと、なぜ留保をつけたかといえばチェルノブイリ原発事故については、4年目以降に小児甲状腺がんが急激に増え始めたからです。ですので福島第一原発から真下方向、南に位置するいわき市などの皆さんもまだ油断してはなりません。

4年目以降の爆発的な増加を数字で確認するため、悪名高き山下俊一福島県立医科大学副学長が書いた資料「チェルノブイリ原発事故後の健康問題※12」を見てみましょう。この資料はチェルノブイリ原発事故で最悪の被害を受けたベラルーシ共和国のなかでも、汚染のひどいゴメリ州の小児甲状腺がん患者数と、チェルノブイリ原発事故後何年目に発病したかがわかります。なおチェルノブイリ原発事故の1年前、1985年も小児甲状腺がんは1人でしたので、チェルノブイリ原発事故から0年の1人も平常と考え青く1人としてあります。

≪ベラルーシ共和国ゴメリ州小児甲状腺がん患者数≫
チェルノブイリ原発事故から 小児甲状腺がん患者数
0年 1人
1年 4人
2年 3人
3年 5人
4年 15人
5年 47人
6年 35人
7年 45人
8年 56人
9年 63人
10年 57人

見ての通り、このゴメリ州の資料は非常にわかりやすいです。毎年1人しかいなかった小児甲状腺がんの患者が1年目は4倍、2年目は3倍、3年目は5倍、そして4年目は15倍に急増し、5年目は47倍と爆発的に増え、そのまま35倍~63倍の間で推移しています。ですので油断するのはまだ早いんです。

以上で幻の放射性ヨウ素汚染地図を復活させる【福島県版まとめ】を締めくくろうと思いますが、幻となってしまったヨウ素汚染地図……福島県については近い将来、ほぼ完璧な形で日の目を見るかもしれません。

そうです、最後にご紹介した福島県市町村別小児甲状腺がん患者数の地図は、福島県発事故当時の放射性ヨウ素131の汚染濃度と因果関係がある…としたら、福島県による子供達への甲状腺がん検査が計画通り進めば、地図はあと数年で完成します。

子供達を甲状腺がんから守るために放射性ヨウ素汚染地図を探していたはずなのに、逆に、子供達の甲状腺がん患者数から放射性ヨウ素汚染地図の完成を見るという皮肉な結果として。

子供達の甲状腺被曝が心配な保護者のかたは、直ちに西日本にある…福島県の息のかかっていない中立的な医療機関を探して、チェルノブイリ原発事故の被曝地ベラルーシは半年に1回ですが、日本の病院だと嚢胞や結節が見つかっても医師の指示は1年に1回が多いので1年に1回甲状腺エコー検査を受けましょう。

もちろん子供だけじゃなく大人も1年に1回は受けるべきです。

▼この関連記事が一緒に読まれています(^O^)
≪幻のヨウ素汚染地図を復活させるシリーズ≫
なぜ放射性ヨウ素汚染地図が必要なのか?
幻の放射性ヨウ素汚染地図【福島県版】
幻の放射性ヨウ素汚染地図【関東・東京版】
幻の放射性ヨウ素汚染地図【日本全国版】

※1http://radioactivity.mext.go.jp/ja/contents/6000/5047/24/5600_0921.pdf
※2http://www.jaea.go.jp/02/press2013/p13062701/02.html
※3http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/6000/5047/25/5600_130701.pdf
※4http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat03/pdf05/04-1.pdf
※5http://fukushima.jaea.go.jp/initiatives/cat03/pdf05/appendix4-1-1.pdf
※6http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/5000/4135/view.html
※7http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/5000/4134/24/1306972_0607.pdf
※8http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/4000/3707/24/1304935_0412_1.pdf
※9http://www.city.sanjo.niigata.jp/common/000065217.pdf
※10http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/260207siryou2.pdf
※11矢ヶ崎克馬琉球大学名誉教授から直接いただいた資料を私が再加工
※12http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm
※13http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/contents/4000/3701/24/1220_20110322.pdf