考えても答えは見つからず、とにかく南へ向かおう。
私は自分に言い聞かせるように一人つぶやきました。
東日本大震災の震源から離れれば離れるほど地震の影響は少なくなるはず。
栃木県内も道行くガソリンスタンドは、福島県と同じでどこも大行列でした。
言うならば、人気の新作ゲームソフトの発売日か、はたまたデパートの初売りのように。
もちろん人が並ぶのではなく車が何百メートルにもわたって並んでいますから、道路は混雑を極めていました。
この行列に並ぶこと、と、渋滞気味のノロノロ運転でも南へと下ることを天秤にかけて私は、とにかく前へ進むことを選びました。
必ず普段通りに営業できているガソリンスタンドに出会えるはずだ。
渋滞の為かガソリンのメーターは、思った以上に早く目減りしていきます。
排気ガスが鼻をつくようになり、少し開けていた車の窓を締めました。
信号待ちで完全に車が止まると私はきょろきょろと周囲を見渡しました。
そういえば栃木県に入ってからマスクが目につきます。でもマスクでは排気ガス遮断できないもんな。とにかく早くこのエリアを抜けねば。
なおこれらの人達も、もちろん内部被ばくを防ぐためにマスクではなかったと思います。風邪流行っていたみたい。
暑くもないのに汗が額からこぼれおちました。
ふいに太平洋…いわきから見た風景が思い出されました。
夏の日。早朝に釣りに出かけて、朝日を眺めたっけな。
昼には、新鮮な海産物がたくさん乗った海鮮丼が食べたっけ。…ウニとかいくらとかマグロの赤身とかたっぷりの。値段高いけどうまいやつ。
目の前には排気ガスにむせぶ大渋滞した道路。そもそも栃木県は内陸県だから海はないし。我ながらよく現実逃避したものです。
だんだんとお腹も減ってきてきました。福島原発の現状を考えたってよくわかならいし、まあひとまず、棚上げしようと思いました。
カロリーメイトでもいいから食べたいな。空腹に耐えながら運転を続けました。