今回はプルトニウムやウランが飛散する危機的な事故となった日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターでの放射性物質漏えい事故をピックアップします。
まず日本原子力研究開発機構の発表によると、放射能汚染は事故現場となった燃料研究棟(PFRF)の108号室(放射線管理区域内)に留まっており、排気ダストモニタ及びモニタリングポスト測定にも異常はないとのことです。※1
しかし事故当初の日本原子力研究開発機構の説明では「(被ばくした作業員の)健康に影響を及ぼすレベルではない」たいしたことなかったはずの事故は…報道発表のたびに被ばくした作業員の状態が深刻なことが刻々と明らかになり、一時は国内最悪の内部被ばく事故なのではないか?とまで報道されていました。※4
そこで事故現場となった日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの地図や場所、事故直後の報道発表などを時系列でまとめました。
このプルトニウムやウランが飛散した事故が、今後どうなっていくか?重要な情報は分かり次第、この記事に反映していきます。
1.日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの地図と場所
日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターは、茨城県の中部にある大洗町(おおあらいまち)にあります。
日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの場所は下記の地図の右側の真ん中、所在地で言えば大洗町の成田町4002番地にあり、東側には国道51号線、そのすぐ先には太平洋が広がっています。
日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターの西側には、鹿島臨海鉄道が運営する大洗鹿島線の涸沼駅(ひぬまえき)があります。
下記が日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター内の施設配置地図です。内部被ばく事故の現場となった核燃料の研究施設である燃料研究棟(PFRF)の場所は大洗研究開発センター内の西側…下記の地図で言えば地図の左側の真ん中にあります。※0
この燃料研究棟(PFRF)の108号室(放射線管理区域内)で放射能漏えい事故は起きました。
2.放射能漏れ事故の時系列
2017年6月6日の午前11時15分頃。茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センター内の核燃料の研究施設である燃料研究棟(PFRF)108号室にある…この前面ガラス張りの作業台の中で事故は起きました。
プルトニウムやウランなどを含む核燃料物質を収納した貯蔵容器の点検作業をしようとした際、核燃料物質を収納した貯蔵容器の外側を覆っていた二重のビニール袋が破裂して、中にあった放射性物質が飛散する事故が発生。※1
プルトニウムやウランなどを含む核燃料物質はどのように飛散したか?まず事故前に撮影された前面ガラス張りの作業台の画像にある黒い四角の部分に注目して下さい。※6
次の画像が核燃料物質の飛散事故後の写真です。前面ガラス張りの作業台の黒い四角の部分が先ほどの画像と同じなので目印になりますが、今度注目すべきは前面ガラス張りの作業台の下の方…床にある赤い丸〇の部分です。黒い粉末や塊が見えませんか?
床にある赤い丸〇の部分をもっと拡大しています。この黒い粉末や塊こそが…事故で飛散したプルトニウムやウランなどを含む核燃料物質の一部と考えられます。
なお核燃料物質は元々は黒くありませんから炭化して黒く変色したと考えられます。この核燃料物質の飛散により、燃料研究棟(PFRF)108号室の室内のほぼ全域…約80平方メートルの室内がプルトニウムで放射能汚染されました。※7
2017年6月6日の午前11時37分。この点検作業にあたっていた作業員に身体サーベイをおこなったところ、作業にあたった5人全員の手と足が放射能汚染されていることが確認。
2017年6月6日の13時55分。この放射性物質漏えい事故のあった燃料研究棟(PFRF)108号室に設置されていたプルトニウムダストモニタの指示値が上昇。
2017年6月6日の14時44分から作業にあたった5人への身体汚染検査を開始。
2017年6月6日の16時20分。身体汚染検査の結果、作業員5人のうち3人の作業員の鼻腔内の放射能汚染(α線で最大24ベクレル)を確認。なお作業員は5人全員、放射性物質漏えい事故当時は半面マスクを着用していた。
2017年6月6日の16時27分。この放射性物質漏えい事故のあった燃料研究棟(PFRF)108号室を立入制限区域に設定。※6
2017年6月6日の18時52分。被ばくした作業員5人に対する除染が完了。※8
2017年6月6日の19時41分。被ばくした作業員5人が肺モニタ測定のため大洗研究開発センターから車で約40分の距離…具体的には25キロほど離れた茨城県東海村にある核燃料サイクル工学研究所に到着。※8
2017年6月6日の23時33分。被ばくした作業員5人に対し核燃料サイクル工学研究所内で実施された肺モニタ測定が終了。作業員5人のうち1人の肺がプルトニウム239で最大2万2000ベクレル放射能汚染されていたこと。作業員5人のうち4人の肺がアメリシウム241で放射能汚染されており最大で220ベクレル計測される。※1※2※8※9
翌日
2017年6月7日の午前11時55分。作業員5人全員が内部被ばくについての詳しい検査のため千葉県にある放射線医学総合研究所(略称、放医研)に到着する。到着後、放医研が作業員5人の身体の放射能汚染状況を再調査したところ、4人の作業員の体の表面に放射性物質がまだ付着していたため体の表面を洗って再除染をおこなう。その後に実施した肺モニタでは、作業員5人全員とも肺からプルトニウムは検出されなかった。ただし肺からアメリシウム241が検出された作業員がいる(人数やベクレルは非公開)。※5※9※10
2017年6月7日の午前12時30分。日本原子力研究開発機構が記者会見し、茨城県東海村にある核燃料サイクル工学研究所の肺モニタにより測定を行った結果、作業員5人のうち1人の肺がプルトニウム239で最大2万2000ベクレル放射能汚染されていたこと。作業員5人のうち4人の肺がアメリシウム241で放射能汚染されており最大で220ベクレル計測されたことを発表。※1※2※8※9
2日後
2017年6月8日の午前11時6分。日本原子力研究開発機構は、肺から最大2万2000ベクレルのプルトニウム239が検出された50代の男性職員の体内に取り込まれた放射性物質の総量を36万ベクレルと推計していると、毎日新聞がニュース速報で伝える。※3
3日後
2017年6月9日。日本原子力研究開発機構が記者会見。放射能汚染されていた作業員5人を放射線医学総合研究所(略称、放医研)が6月7日に放射能汚染状況を再調査したところ、4人の作業員の体の表面に放射性物質がまだ付着していたため体の表面を洗って再除染をおこない、その後に実施した肺モニタでは作業員5人全員とも肺からプルトニウムは検出されなかったと発表。※5
6日後
2017年6月12日。放医研が所属する量子科学技術研究開発機構が記者会見。放医研が作業員5人に対して、受け入れ後に実施した3~4回の肺モニタの計測では作業員5人全員とも肺からプルトニウムは検出されなかったが、肺からアメリシウム241が検出された作業員がいることを発表。アメリシウム241は何ベクレル検出されたのか?検出されたのは作業員5人のうち何人だったのか?については、量子科学技術研究開発機構の明石真言執行役が、作業員の個人情報を理由に証言を拒否した。※9※10※11
7日後
2017年6月13日。作業員5人全員が予定されていた治療を終え放射線医学総合研究所(略称、放医研)を退院。※12
10日後
2017年6月16日。放射線医学総合研究所(略称、放医研)の担当医が日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターを訪れ、バイオアッセイ検査の結果…作業員5人全員の尿から微量のプルトニウムが検出されたことを本人達に告知し、治療のため再入院を勧める。※13
12日後
2017年6月18日までに作業員5人全員が放射線医学総合研究所(略称、放医研)に再入院。※13
20日後
2017年6月26日までに作業員5人全員が放射線医学総合研究所(略称、放医研)を退院。※14
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※0https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17060601/s01.pdf
※0https://www.jaea.go.jp/04/o-arai/pamphlet/center_information/center_info_15.pdf
※1https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17060601/
※1http://www.asahi.com/articles/ASK675Q1VK67ULBJ011.html
※1http://www.asahi.com/articles/ASK675T44K67ULBJ014.html
※2https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17060701/
※2http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170607/k10011009131000.html
※3https://mainichi.jp/articles/20170608/k00/00e/040/256000c
※4https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170606-00000100-jij-soci
※5https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17060902/
※5http://www.asahi.com/articles/ASK696TP7K69ULBJ013.html?iref=comtop_8_07
※6https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17060902/photo.html
※7http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14970167152197
※8https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17061201/s01.pdf
※9https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17061201/s02.pdf
※9https://www.jaea.go.jp/02/press2017/p17061201/
※10http://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=14972765179090
※10http://www.asahi.com/articles/ASK6D677ZK6DULBJ00Q.html
※11http://www.qst.go.jp/Portals/0/pdf/information/press/170606/press170612.pdf
※12http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170613/k10011016391000.html?utm_int=news_contents_news-genre-new_001
※12http://www.jiji.com/jc/article?k=2017061300864&g=eqa
※13http://www.qst.go.jp/Portals/0/pdf/information/press/170606/press170619.pdf
※13http://www.jiji.com/jc/article?k=2017061900772&g=eqa
※14http://www.qst.go.jp/Portals/0/pdf/information/press/170606/press170626.pdf