原子力規制委員会は2016年8月4日、運転開始から40年を超えれば本来は廃炉になる…いわゆる老朽原発となるまで、あと4か月と迫っていた関西電力の美浜原発3号機について20年間の運転延長を可能にする「審査書案」を了承し審査を合格させました。※1※2
これで美浜原発3号機は2036年まで運転できることになります。ただし追加工事などの必要があるため、美浜原発3号機の実際の再稼働は2020年の春以降になる見通しです。
福島第一原発事故後に改正された原子炉等規制法は、原発の運転期間を原則40年と規定しています。しかしこの規制には例外…抜け穴があって原子力規制委員会の延長審査に合格すれば最長20年の延長が1回だけ可能と規定されています。つまり延長審査に合格すれば原発の運転開始から数えて最長60年まで運転できるということです。
運転開始から40年を超えれば本来は廃炉になる原発の運転延長が認められたのは2016年6月20日に老朽化の高浜原発1号機、2号機が運転延長審査に合格して以来、2例目の出来事です。
これで福島原発事故後に導入された原発の運転開始40年廃炉ルールが完全に骨抜きになってしまったことになります。このままでは運転開始から37年の東海第二原発や運転開始から36年、37年となる大飯原発1号機、2号機も20年間の運転延長審査を申し込みしてくる可能性があります。
運転開始から35年以上たった原発…老朽原発予備軍の原発も含めて、老朽原発の現状を確認してみましょう。
原発名 | 運転年数 | 現状 | 事業者 |
敦賀原発1 | 46年 | 廃炉決定 | 日本原電 |
美浜原発1 | 45年 | 廃炉決定 | 関西電力 |
美浜原発2 | 44年 | 廃炉決定 | 関西電力 |
島根原発1 | 42年 | 廃炉決定 | 中国電力 |
高浜原発1 | 41年 | 運転延長 | 関西電力 |
高浜原発2 | 40年 | 運転延長 | 関西電力 |
玄海原発1 | 40年 | 廃炉決定 | 九州電力 |
美浜原発3 | 39年 | 運転延長 | 関西電力 |
伊方原発1 | 38年 | 廃炉決定 | 四国電力 |
東海第2 | 37年 | 稼働予定 | 日本原電 |
大飯原発1 | 37年 | 未定 | 関西電力 |
大飯原発2 | 36年 | 未定 | 関西電力 |
玄海原発2 | 35年 | 未定 | 九州電力 |
目につくのが関西電力の多さです。関西電力は老朽原発や老朽原発予備軍の原発の53%をたった1社で抱え込んでいることになります。
最後に。日本の原発を審査している日本の原子力規制委員会は、アメリカの原子力規制委員会(NRC)を真似して作ったものですが、アメリカ原子力規制委員会(NRC)のトップだったグレゴリー・ヤツコ前委員長が、福島原発事故後に語ったの言葉に最後に耳を傾けてみましょう。※3
「原発は運転開始からは40年ほどであっても建設に10年かかっているかもしれません。さらに、その前の設計に5年から10年かかっているものもあります。つまり原発は60年…あるいはそれ以上前の技術で作られているということです。多くの原発が改良され最新化されていますが設計の骨格となる発想は50~60年前のものです。どこかの時点で『(老朽原発を無理やり運転させるのは)もういいかげん止めよう』と言わなくてはなりません。」 |
日本人は福島原発事故から…いったい何を学んだのでしょうか?
私達は再び、日本で起こる原発事故を目撃することになるかもしれません。
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※1http://fukunawa.com/fukui/5122.html
※2http://fukunawa.com/fukui/16338.html
※3http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=160309