2016年7月13日、内閣府は3歳未満の乳幼児にも簡単に飲ませることができるゼリー状の安定ヨウ素剤(イチゴ味)を、原発から30キロ圏内にある市町村に対して配備すると発表した。※1
安定ヨウ素剤とは、原発事故に備えて調合された放射能を持たないヨウ素で、原発事故の際、予め服用して甲状腺に安定ヨウ素を満たしておくことで、体内に吸収された放射性ヨウ素が甲状腺に取り込まれずに大部分は体外に排出でき、放射性ヨウ素による甲状腺被曝を軽減できる薬です。この安定ヨウ素剤を飲むことで、原発事故による甲状腺がんのリスクを軽減することができます。
しかし今までのヨウ素剤は丸薬や粉末しかなく、3歳未満の乳幼児への服用については粉末状のヨウ素剤を薬剤師が、その都度…水やシロップで溶いて飲ませる必要があったため事前配布ができない、服用させるのに時間がかかってしまう、いざ原発事故が起こった時に一番被爆の影響を受けやすい乳幼児の服用が間に合わない可能性がある、などの問題点が指摘されていました。
そこで日本政府は日本で唯一、丸薬のヨウ素剤を製造・販売している日医工株式会社(富山県富山市)に乳幼児にも服用させやすいヨウ素剤の開発を要請してきた。これを受けて日医工株式会社が開発したゼリー状の安定ヨウ素剤が2016年7月13日に厚生労働省の承認を得たため、内閣府は即日、原発から30キロ圏内にある市町村に対して配備すると発表したわけです。※2
このゼリー状の安定ヨウ素剤は効果も3年間保存できる点も丸薬と同じ。しかもミルクやお湯にも溶けるため、新生児にも家族が簡単に飲ませることができます。
■ゼリー状の安定ヨウ素剤が配備される市町村の分布
ゼリー状の安定ヨウ素剤は、原発から30キロ圏内にある市町村(PAZ及びUPZ)に対して配備されます。ヨウ素剤が配備される市町村があるのは北海道や京都府、茨城県、静岡県など21道府県です。さらに核燃料の加工施設などがある大阪府、神奈川県、岡山県の3府県にもヨウ素剤が配備される市町村があります。ですから合計24道府県の原発から30キロ圏内にある市町村がゼリー状の安定ヨウ素剤の配備対象地域となります。※3
原発がある |
北海道、青森県、宮城県、福島県、茨城県、新潟県、静岡県、石川県、福井県、島根県、愛媛県、佐賀県、鹿児島県 |
原発に隣接(原発から10キロ圏内) |
京都府、長崎県 |
原発に隣接(原発から30キロ圏内) |
富山県、岐阜県、滋賀県、鳥取県、山口県、福岡県 |
核燃料の加工施設などがある |
大阪府、神奈川県、岡山県 |
ゼリー状の安定ヨウ素剤の配備対象となる3歳未満の乳幼児の人数は、合計11万5千人と見積もられています。
■ゼリー状の安定ヨウ素剤が配備される時期
日本政府は原発から30キロ圏内など配備対象の市町村に、2016年9月から配備を開始し2017年3月31日までに配備を完了する予定。なお原発から30キロ圏外の市町村でも希望があれば2017年4月1日以降に配備を検討する可能性がある。※4
※1http://www8.cao.go.jp/genshiryoku_bousai/pdf/01_pr_youso.pdf
※2http://www.nichiiko.co.jp/finance/gif/4541_20160713_01.pdf
※3http://www.cao.go.jp/yosan/pdf/26_0014_kokai_sankou.pdf
※4http://www.asahi.com/articles/ASJ7F46M5J7FULBJ006.html
▼この関連記事が一緒に読まれています(^O^)
≪福島原発事故と甲状腺被曝線量シリーズ≫
★安定ヨウ素剤国際基準&アメリカ甲状腺被曝地図
★SPEEDI甲状腺被曝調査致命的ミス&実測まとめ