2016年8月19日、福島労働基準監督署(福島市)は、福島第一原発事故の収束作業に従事し、その後白血病と診断されていた50代の元原発作業員の男性を労災と認定しました。
これで元原発作業員の男性は、無料でのガン治療や通院費の全額支給など労災保険による手厚い医療補償が受けられます。※0
元原発作業員の男性は、東電の協力会社の社員として福島第一原発で2011年4月~2015年1月までの3年9ヶ月間、がれき撤去や汚染水の処理に使う機械の修理を主に担当。2015年1月に白血病と診断され、2016年8月19日現在は通院で治療をおこなっています。
元原発作業員の男性が福島第一原発での3年9ヶ月間の累積被ばく線量は54.4ミリシーベルト。
福島原発事故の収束作業に参加した原発作業員が被ばくによってガンになったと労災で認定されたのは今回で2例目となります。
労災認定 | 病名 | 累積被曝 | 年齢性別 | |||||||||||||
1 | 2015年10月 | 白血病 | 19.8mSv | 40代男性 | ||||||||||||
2 |
2016年8月 | 白血病 | 54.4mSv | 50代男性 |
まず被ばくによる白血病の労災認定基準には、被曝開始から1年を超えた後に発生した白血病であること、年間の被ばく線量が5ミリシーベルト以上などの条件があります。※1
さらに個別の事例について、この被ばくによる労災認定基準を満たすかどうか?厚生労働省に設置されている医学の専門家で構成される非公開の検討会で議論されます。
元原発作業員の男性は、これらの被ばくによる白血病の労災認定基準を満たし、労災保険の検討会でも労災認定が妥当、との取りまとめがおこなわれたと考えられます。
福島第一原発事故の収束作業に参加した元原発作業員のうち…がんを発病し労災保険の労災を申請した人は現在まで合計11人いますが、上記の一覧表にある2人だけが労災認定され3人は不支給決定、1人は労災申請の取り下げ、5人は調査中となっています。※3
つまり被ばくによる労災認定は一見、簡単そうに見えて実はハードルが高いのです。
ところで話は変わりますが、日本は2016年現在でも世界3位…43基もの原発を1国で抱える原発大国です。ちなみに福島原発事故を起こした2011年はもっと多く54基もの原発がありました。(世界の原子力発電所分布地図&原発数の国別ランキング日本は何位?を参照)
ここで、あなたに1つ質問します。日本の原発作業員で、被ばくによる労災を認定された人は今まで合計何人いるでしょうか?
1000人?
10000人?
いいえ。
もっと驚くような人数です。
答えを見てみましょう。
下記の一覧表が原発労働者の労災認定数(病気別)です。
病名 | 人数 |
白血病 | 8人 |
悪性リンパ腫 | 5人 |
多発性骨髄腫 | 2人 |
合計 | 15人 |
答え15人。日本には…たった15人しか被ばくで労災認定された原発作業員は存在しないんです。今まで40~50基もの原発を10~40年も運転してきたのに…被ばくによって労災認定された原発労働者はたった15人。異常なほど少ないのがわかると思います。※4
日本の今までの原発作業員は、がんになっても労災を申請しない…あるいは勤めている会社がそもそも労災保険に加入していなかったり、病気になっても自己責任という内容の誓約書を入社時に書かされたのでガンになっても労災を申請できないと思い込んだまま亡くなる方がほとんどでした。※これらのケースでも労災申請できます
しかし労災を申請しても、なかなか労災認定してもらえないのが実情なのです。
福島第一原発事故の収束作業に参加した元原発作業員のうち…がんを発病し労災保険の労災を申請した人は現在まで合計11人いました。労災認定されたのは2人だけ。3人は不支給決定、1人は労災申請の取り下げ、5人は調査中です。
労災認定されなければ…がんになっても泣き寝入りするしかない。これが今も昔も変わらない原発作業員の悲惨な現実なのです。
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※0http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000081118.html
※1http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/09/dl/s0909-11c.pdf
※1http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11400000-Roudoukijunkyokuroudouhoshoubu/siryou_1.pdf
※2http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000132419.html
※2http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/10/s1023-4a.html
※3http://www.sankei.com/affairs/news/160819/afr1608190008-n1.html
※4http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/genchicyousei/2015/pdf/1030_01k.pdf