放射性セシウムの食品の規制値についてご質問します。 政府の基準値である乳児用食品は50ベクレル/1kg以下の放射能汚染された食品なら子供達に食べさせても安全でしょうか。 大人である私達の場合、一般食品の基準値である100ベクレル/1kg以下の食べ物なら口にしても健康被害は絶対に出ない、大丈夫と考えていいのでしょうか。 |
A回答(回答者:矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授)
■子供は1ベクレルでも大問題
安全か?という点で言えば50ベクレルは、まるっきり安全ではありません。根拠のない数字です。このことで今、大阪のがれき裁判に私が提出している意見書にも、特に強調して書いてあることなんですがね。
内部被曝から体を守るためには徹頭徹尾、放射能汚染された食品を口にしない。
これを目指さなくてはいけない。やむを得なく、食べざるを得ないとしても赤ちゃんや子供達については1kgあたり1ベクレルもあったら大問題です。
ですから子供達に「50ベクレル/1kg以下の放射能汚染された食品なら食べさせても大丈夫」なんていう日本の基準値は、国家による児童虐待であり許しがたいことです。
日本政府が事あるごとに参考にしている国際放射線防護委員会(ICRP)が、被曝被害をいかに過小評価しているかということがわかる数値があります。欧州放射線リスク委員会(ECRR)という団体が、広島、長崎で原爆が落ちた1945年から1989年までの間に原爆の投下や核実験、原発からの放射線によって命を失った人は全世界で6,500万人という統計が発表されています。それに対して国際放射線防護委員会は117万人しかいないと言うんです。
国際放射線防護委員会(ICRP) | 欧州放射線リスク委員会(ECRR) |
117万人 | 6,500万人 |
欧州放射線リスク委員会(ECRR)が放射線によって命を失ったと考えている全世界6,500万人の中で、小児がんなどで命を失った子供達が160万人、お母さんのおなかの中で胎児のまま死んでしまった子供達が190万人と推計しています。
このような認識の違いが出る原因としてICRPは内部被曝をまったく否定している。
例えば、原発の風下にある牧場に放射性物質が降り注いで、その草を食べた牛の牛乳に放射性物質が入って、それを赤ちゃんが飲んで命を失う可能性もある。そういう可能性自体をまったく否定している。子供や胎児が死亡するはずがない、そう決めつけているんです。
だからICRPの考え方を鵜呑みにした日本政府は「乳児用食品は50ベクレル/1kg以下なら安全」なんでいう…とんでもない数値を設定している。
子供の安全を守るという点では、まったく見当違いな数値です。
■大人でさえ10ベクレルが限界
やっぱりみんな食べたいものがあって、食べ物を制限すると大変なので、ある程度妥協せざるを得ない部分もあるのだけれども。
大人は1kgあたり100ベクレルまでは大丈夫だなんて国の食品衛生管理委員会が発表して日本の基準値ということで流れておりますが。これも健康を守るという意味での値ではまったくないです。
私が「食べない方が良い」はっきり言えるのは10ベクレル。10ベクレルもあれば食べません。
ドイツは放射線防護令(2001年SSV)※1という日本にはない法令を持っています。この法令により1年間0.3ミリシーベルトという法的なガードがかかっているのです。
これに基づいてドイツ放射線防護協会という団体が、いろんな仮定をしながら計算をするとセシウム137は大人で8ベクレル、子供で4ベクレルこれが限界だと2011年3月20日に提言※2している。
現実問題として食品制限の100ベクレルは少なくとも現在の10分の1…1kgあたり10ベクレル以下に健康を守る値(あたい)にして、それ以上は全部排除しなければならない。
現状では、日本の1億2千万人すべての日本国民、全住民が内部被曝の被害にあう危険性があると私は考えています。
■消費者も農家も守れる基準値を
今の日本には、チェルノブイリ法では「強制移住」「生産禁止」にあたる汚染ゾーンに100万人規模の人々が住んでいます。放射能汚染された田んぼや畑でお米や野菜を作らざるを得ない人達がたくさんいるのです。
この農家の人達は、日本の政治ゆえに、放射能汚染を承知でお米や野菜を作って、放射能で汚染された農産物と知りつつも売らないと生きていけない状況に追い込まれています。
このように追いつめられてしまって、消費者は内部被曝したくないから当然汚染地域の作物は避けようとします。全国各地で放射能汚染地帯の農産物が買い叩かれ、大安売りされてしまっていますけれども、これは日本政府による…農家も消費者も守っていない…住民切り捨ての政治から生じている悲劇です。農家も消費者も守っていない現在の食品の基準値からきています。
国は、1kgあたり10ベクレルを基準値にして1ベクレルまで確実に測れる体制をとっていかないといけない。
消費者の健康を守れる食品の基準値にして、基準値を超えた食品は流通させずに東電に賠償させることが、消費者と農家の両者にとって不可欠なことです。
■チェルノブイリ事故後の被害は根本的な基準の見直しを迫っています
チェルノブイリ事故の被害記録を見ると、日本の食品中の「放射能規制値」も「20ミリシーベルト以下は安全」という「安全基準」も、政府が如何に放射能の危害を軽視しているかということを歴然と物語っています。
IAEAは「事故後に出た健康被害は甲状腺がんだけ」と今も言い続けています。しかし実際には、多種多様なあらゆる健康被害が記録されています。ICRPは「100ミリシーベルト以下の組織的変化(確定的影響)は認められない」としていますが、その100分の1から1000分の1程度の被曝量で多大な組織的影響の健康被害が出ています。
ICRPの一般論からのリスク評価は現実に出ている健康被害の100分の1ほどにしかなりません。ICRP等が事実を説明できないことは明らかです。被害事実を認めないやり方はここにまで至っているのです。市民の基本的人権を踏みにじる行為なのです。
このように現実のリスクを言い表すことに失敗しているICRPに依拠した基準は即刻撤回させるべきです。
+編集後記
矢ケ崎克馬教授が話されたドイツ放射線防護協会は科学者の団体ですが、その勧告…セシウム137なら大人は8ベクレル、子供は4ベクレル…は世界的に見ても非常に厳しい基準です。この基準…私の知る限り世界一厳しいんじゃないでしょうか。
その厳しいドイツ放射線防護協会の基準をあえて、矢ケ崎克馬教授が原発事故から3年半年たった今、改めて話されたのは、当たり前の話ですが食べ物に含まれる放射性物質は少なければ少ないほど良いわけです。もともとセシウムは、毒性を持った放射性物質なわけですから。
さらに研究者や農家がセシウムに汚染された土壌と向き合い、表土をはぎ取ったりゼオライトやカリ成分を散布するなどの栽培方法の技術革新により、農作物への移行を減らす成果が福島県をはじめとする各地で報告され始めています。
そういう今だからこそ矢ケ崎克馬教授は「手綱を緩めず、限りなく0を目指せ!」とはっぱをかけて下さっているのだと思います。
※1 http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/3/ho1011.pdf
※2 http://www.strahlentelex.de/Empfehlungen_jp.rtf
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