福島県の中通り、浜通り、会津地方と避難区域の比較

2018年7月8日、福島県立医大は福島県立医大で手術したのに福島県民調査報告書にはカウントされていない甲状腺がんを発病した子供達が少なくとも11人いることを文書で認めました。※1

福島原発事故で被ばくした福島県の子供達を対象とする甲状腺がん検査。福島県からの委託を受けて福島医大が実施しています。

その福島県立医科大学で甲状腺がんの手術を受けた福島の子供達になぜか?福島県民調査報告書から漏れてカウントされていない子ども達がいる。

そもそも、この問題が発覚したのは2017年3月30日…今から1年3か月前も前のことです。

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当時はNHKが夜7時から放送している「ニュース7」で報じるなど大手マスコミや全国紙の新聞社もいっせいに報道したため注目を集めました。※2
福島医大が福島原発事故当時4歳だった男児の甲状腺がん発病を未報告(2017年3月30日NHK夜7時のニュース)

詳しくは福島医大が小児甲状腺がんを事実上隠蔽→何人の子供が隠ぺいされた?で特集していますが、当時NHKや大手マスコミや全国紙の新聞社がいっせいに報道したのは、福島医大で経過観察をし福島医大で甲状腺がんの手術を受けた原発事故当時4歳の男子1人だけでした。

その翌日2017年3月31日に特定非営利活動法人の『3・11甲状腺がん子ども基金』の崎山比早子代表理事が記者会見をおこないました。※3

実は『福島原発事故当時4歳だった福島県の男児の甲状腺がん発病を、福島医大が未報告…つまり事実上隠ぺい』していることを、検査と関係ない第三者で最初に把握したのが、この『3・11甲状腺がん子ども基金』です。

崎山比早子代表理事(3・11甲状腺がん子ども基金)

崎山比早子代表理事(3・11甲状腺がん子ども基金)
「2017年2月に福島県(内)から(3・11甲状腺がん子ども基金に給付金の)申請のあった4人の中に1人(原発)事故当時4歳児(男子)が含まれていた。この(原発事故当時4歳男子の)方は(福島県の)県民健康調査を受け、経過観察も福島県立医科大学でしていたし、(その後の甲状腺がんの)手術も福島県立医科大学で受けたのに、(福島県立医科大学が中心になってまとめているはずの)福島県の県民健康調査の報告書の(甲状腺がん患者数の)中には、この(原発事故当時4歳男子の)方は含まれていない。(だから)問題だと思った」

崎山比早子代表理事の記者会見はさらに続き、ある重要な情報が発表されます。

崎山比早子代表理事(3・11甲状腺がん子ども基金)

崎山比早子代表理事(3・11甲状腺がん子ども基金)
「(3・11甲状腺がん子ども基金は、今日までに)福島県内の(甲状腺がんを発病した)子供54人に療養費を給付したが、この原発事故当時4歳男子以外にも少なくとも5人(の甲状腺がんの子供達)が福島県の県民健康調査の報告書(の甲状腺がん患者数)には含まれていない、と考えられる」

つまり県民健康調査の報告書から漏れていた原発事故当時4歳男子1人は氷山の一角にすぎず…報告書から漏れている甲状腺がんの子供達は少なくとも6人いるということは2017年3月31日時点で指摘されていたわけです。

今回2018年7月8日に福島医大が文書で認めた福島県民調査報告書に漏れている甲状腺がんの子供達11人はあくまで福島医大病院で手術をうけた患者だけです。

ですから福島医大病院以外で手術をうけた甲状腺がんの子供たちが…もし、いたとすれば。それらの子供達は含まれていないわけですが。

それにしても福島医大は自らの組織内の内部調査するだけなのに…なんで1年3か月も時間がかかったのか?

しかも今回2018年7月8日に福島医大が公表した文書には、調査対象期間が2011年10月9日~2017年6月30日とあります。※1

今日は2018年7月17日ですから、今回福島医大が出してきたデータは…すでに1年以上前の古い時点のデータなわけです。

2017年7月1日からの1年でまた…福島県民調査報告書に漏れている甲状腺がんの子供達が増えた可能性だってあるわけです。

古代遺跡の発掘調査やってるわけじゃないんですから、時間はかかるわ、出てくる資料は古いわ、さらなる集計漏れの可能性を質問した評価部会の委員にキレ気味に答えるわ、は福島医大の名誉のためにもやめていただきたいと思います。

この記事で後から詳しく解説しますが、福島医大の集計漏れ11人のうち経過観察後の集計漏れ7人については弁明の余地などない福島医大のミスです。

なぜなら2015年2月2日に開催された福島県の県民健康調査検討委員会の第5回甲状腺評価部会の席上で春日文子委員が指摘します。※4

第5回甲状腺評価部会の春日文子委員

春日文子委員
「万が一、経過観察後に悪性の結果(つまり甲状腺がんのこと)が出てしまったような場合には、それはどういう形で結果が出され、まとめられるのでしょうか?」

この質問に対し当時、甲状腺検査を担当していた福島県立医科大学の鈴木眞一教授は、こう回答しています。

鈴木眞一教授(福島県立医大)
「幸いにも今のところ…そういう(経過観察後に甲状腺がんを発病した)症例がないので(報告自体必要ないので)報告はしていませんけど、そういう(経過観察後に甲状腺がんを発病)があれば(定期的に公表している福島県の甲状腺検査の報告書とは)別枠で報告となると思います。経過観察中に発見された悪性腫瘍ということ(で別枠で報告)になると思います。」

経過観察後に甲状腺がんを発病があれば別枠で報告となると主張し始めたのは、あくまで福島県立医大の鈴木真一教授ですから。

その後別枠での報告はありませんでしたので経過観察後に甲状腺がんになった子供はいないと誰もが福島医大を信じていました…甲状腺がん患者の集計漏れが発覚する2017年3月30日までは。

これらの経緯からすれば、さらなる集計漏れの可能性を質問した評価部会の委員が例え…見当違いな可能性を指摘しているにすぎなくても…キレ気味に答えるのはマズい。私人としてでなくミスを犯した福島県立医大の…という立場で答弁しているわけですから。

さらに今回2018年7月8日に福島県立医大が甲状腺がん11人の集計漏れを認めた文章には大きな問題があります。

集計漏れの甲状腺がん11人を福島県民調査報告書のように福島原発事故当時の年齢で分類する…のではなく勝手に年代で分類して発表してきたのです。※1

甲状腺がん集計漏れ11人の
原発事故当時の年齢
0~4歳 5~9歳 10~14歳 15~19歳
1人 1人 4人 5人

しかもこの年代での分類。一見、合理的に見えて実は不合理な分類なんです。

0歳~19歳までの20の年齢を5つずつ均等に分類することの、いったいどこが不合理なのか?

【1】原発事故当時19歳の検査対象者などいない

福島県民健康調査の甲状腺の先行検査の対象者がどのように書かれているか?見てみましょう。※6

先行検査の対象者
「平成23年3月11日時点で概ね0歳から18歳(具体的には平成4年4月2日から平成23年4月1日までに生まれた方)までの福島県民」

先行検査の対象者の中で最年長は平成4年4月2日生まれの子供です。

では平成4年4月2日生まれの子供は平成23年3月11日時点で何歳だったか?

答えは18歳11か月9日です。19歳になるまで、あと22日ありました。

少し細かい話ですが、実は福島県の先行検査の対象者は平成23年3月11日時点と書きながら実際は平成23年4月1日時点で計算しているわけですが…。

平成4年4月2日生まれの子供は平成23年4月1日時点で18歳11か月30日。そして平成23年4月1日23時59分59秒をもって満19歳、平成23年4月12日が世間でいう19歳の誕生日となりますので。

つまり本来必要ない原発事故当時19歳の年齢が加えられている点で、この年代の分類は合理的でありません。

甲状腺がん集計漏れ11人の
原発事故当時の年齢
0~4歳 5~9歳 10~14歳 15~19歳
1人 1人 4人 5人

では甲状腺がんの子供たちを合理的に均等に年代別に分類するにはどうすればいいか?

それは簡単で先行検査に次に行われた本格検査の甲状腺検査の対象者を見てみましょう。※7

本格検査の対象者
先行検査における対象者(平成4年4月2日から平成23年4月1日までに生まれた福島県民)に加え、本格検査(2回目)から平成23年4月2日から平成24年4月1日までに生まれた福島県民

本格検査から福島原発事故後1年程度に生まれた子供達も甲状腺検査の対象となりますので、それらの子供たちを原発事故当時-1歳に分類して5つずつ分ければ年齢を均等に合理的に分類できます。

原発事故当時の年齢分類
-1~3歳 4~8歳 9~13歳 14~18歳
-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18

ですから本来必要ない原発事故当時19歳の年齢が加えられている点で、この年代の分類は一見、合理的に見えても実は不合理な分類なんです。

甲状腺がん集計漏れ11人の
原発事故当時の年齢
0~4歳 5~9歳 10~14歳 15~19歳
1人 1人 4人 5人

この分類には、さらなる問題が潜んでいます。

【2】原発事故当時5歳以下の子供が分断される

前提知識を少し。2016年2月15日、福島県の第22回県民健康調査検討委員会は「(福島県内で多発している子供達の甲状腺がんは福島原発事故の)放射能の影響とは考えにくい」とする『中間とりまとめ』をおこない、その際に放射能の影響を否定する根拠を4つ示しました。※8

1.被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小さいこと
2.被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと
3.事故当時5歳以下からの発見はないこと
4.地域別の発見率に大きな差がないこと

今回の福島県立医大による年代での分類では5歳以下の甲状腺がんの子供が何人いるか?確認しようにも4歳と5歳が別々の分類となってしまいます。

甲状腺がん集計漏れ11人の
原発事故当時の年齢
0~4歳 5~9歳 10~14歳 15~19歳
1人 1人 4人 5人

しかも原発事故当時5~9歳だった甲状腺がんの子供が1人いると分かっても、その1人が5歳なのか6歳なのか7歳なのか8歳なのか9歳なのかわからないので上記で紹介した放射能の影響を否定する根拠の3つ目

3.事故当時5歳以下からの発見はないこと

に該当するのか?しないのかがわからなくなってしまいます。

もちろん私が先ほどご紹介した福島原発事故後1年程度に生まれた子供達を-1歳に分類して5つずつ分ければ年齢を均等に合理的に分類できますが、この年代別でも、やはり5歳以下が何人かはわかりません。

原発事故当時の年齢分類
-1~3歳 4~8歳 9~13歳 14~18歳

ですから集計漏れの甲状腺がん11人も福島県民調査報告書のように福島原発事故当時の年齢で分類する必要があり、今回の福島医大が勝手に年代で分類して発表してきたのは大きな問題です。

そもそも甲状腺がんの集計漏れの問題が発覚した2017年3月30日…今から1年3か月前

当時、NHKが夜7時から放送している「ニュース7」で報じるなど大手マスコミや全国紙の新聞社もいっせいに報道したのは福島医大で経過観察をし福島医大で甲状腺がんの手術を受けた男の子が原発事故当時4歳だったからです。
福島医大が福島原発事故当時4歳だった男児の甲状腺がん発病を未報告(2017年3月30日NHK夜7時のニュース)

放射能の影響を否定する根拠の3つ目

3.事故当時5歳以下からの発見はないこと

の根拠を崩す福島原発事故当時4歳の甲状腺がんの存在を、福島医大で経過観察をし福島医大で手術をしたのに報告せず、マスコミに報道される当日まで黙っていて、事実上隠蔽していたととらえられても仕方ないような有様だったから全国をこのニュースが駆け巡ったんでしょう?

集計漏れの甲状腺がん11人も福島県民調査報告書のように、きちんと福島原発事故当時の年齢で分類した形で発表すべきです。例えば、このように。※9

2017年6月30日時点
福島県小児甲状腺がん原発事故当時の年齢別
年齢 合計
0歳
1歳
2歳
3歳
4歳
5歳 1人 1人
6歳 1人 1人 2人
7歳 2人 1人 3人
8歳 3人 4人 7人
9歳 4人 4人
10歳 4人 9人 13人
11歳 4人 9人 13人
12歳 10人 9人 19人
13歳 7人 13人 20人
14歳 6人 11人 17人
15歳 10人 12人 22人
16歳 10人 14人 24人
17歳 12人 17人 29人
18歳 5人 15人 20人
合計 75人 119人 194人

繰り返しますが、福島医大は集計漏れの甲状腺がん11人も福島県民調査報告書のように福島原発事故当時の年齢で分類する必要があります。

さて今回福島医大が出してきた集計漏れの甲状腺がん11人のデータは時点が2017年6月30日と古いので、同じ2017年6月30日時点の福島県民調査報告書の甲状腺がん患者数をまず見てみましょう。

2017年6月30日時点の福島県民調査報告書によると福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は合計193人でした。

福島県子供の甲状腺がん市町村別地図2017年6月30日版

それに対して集計漏れの甲状腺がんは11人ですから甲状腺がんの人数を合計すると204人です。

11人÷204人=5%

つまり福島県の小児甲状腺がん及び疑い5%が集計から漏れていたことになります、福島医大病院で手術したにもかかわらず。

また集計漏れの甲状腺がん11人すべて手術済みで甲状腺がんと確定した子供達ですので今度は2017年6月30日時点の福島県民調査報告書で手術して甲状腺がんと確定した子供達102+50+3=154人とも比較してみます。

福島県小児甲状腺がん手術件数まとめ(2017年6月30日)

集計漏れ11人と報告書記載154人の小児甲状腺がん患者両方合わせる165人です。

11人÷165人=6%

つまり甲状腺がんと確定した子供達の6%が集計から漏れていたことになります、福島医大病院で手術したにもかかわらず。

■集計漏れも合計すると4地方の明暗が鮮明に

続いて福島県の地方別での小児甲状腺がん患者数の比較…を見る前に前提知識を少し学びましょう。でないと私の言っていることがチンプンカンプンで理解できません。

まず福島県は59市町村、3つの地方からなっています。下の福島県の地図で言うと左側から会津地方、真ん中にある中通り地方、海に面し福島原発がある浜通り地方の3つの地方から福島県は構成されています。
福島県は中通り地方、浜通り地方、会津地方の3地方からなる

しかし今回の地方別での比較で使用するのは4つの地方…具体的には会津地方、中通り地方、浜通り地方と避難区域等の4つに分類した地方を比較します。
福島県の中通り、浜通り、会津地方と避難区域

福島県の3つの地方と避難区域との関係は、このgif動画の地図を見ればわかります。
福島県の中通り、浜通り、会津地方と避難区域の比較
中通り地方と浜通り地方の一部市町村が避難区域等になることにより4つの地方に分類されます。
福島県の中通り、浜通り、会津地方と避難区域

まず福島原発事故当時、放射性ヨウ素131によって甲状腺を被曝させられた福島県の18歳以下の子供達は合計36万7649人です。この36万7649人は1先行検査の対象でしたが、実際に1先行検査を受けたのは検査対象者の81%にあたる30万0473人だけです。※5

今から3つの一覧表をみていきます。

まず、この1先行検査の受診者30万0473人を福島県の4つの地方ごとに分類した一覧表。

1先行検査の受診者30万0473人の分類
会津 中通り 浜通り 避難区域
33720人 169153人 55790人 41810人

次に、この甲状腺検査の受診者のうち何人の子供達が甲状腺がんになったのか?の一覧表。

福島県小児甲状腺がん及び疑い193人
2017年6月30日時点福島県発表
会津 中通り 浜通り 避難区域
17人 108人 34人 34人

福島の甲状腺がんの193人の子供達を4地方別に分類

最後に、集計漏れの甲状腺がん11人も4つの地方ごとに分類して、それぞれ足し算して合計を出した一覧表。

福島県小児甲状腺がん及び疑い193人11人
2017年6月30日時点福島県発表
会津 中通り 浜通り 避難区域
17人 112人 37人 38人

人数のままだと、ちょっと分かりにくいかもしれないので今まで見た3つの一覧表を今度は比率%に直してみてみましょう。

まず、この1先行検査の受診者30万0473人を福島県の4つの地方ごとに分類した一覧表。避難区域の%がどのように変化していくか?に注目して見て下さい。

1先行検査の受診者30万0473人の分類
会津 中通り 浜通り 避難
11% 56% 19% 14%

次に、この甲状腺検査の受診者のうち何人の子供達が甲状腺がんになったのか?の一覧表。避難区域の%がどのように変化していくか?に注目して見て下さい。

福島県小児甲状腺がん及び疑い193人
2017年6月30日時点福島県発表
会津 中通り 浜通り 避難
9% 56% 17% 18%

最後に、集計漏れの甲状腺がん11人も4つの地方ごとに分類して、それぞれ足し算して合計を出した一覧表。避難区域の%がどのように変化していくか?に注目して見て下さい。

福島県小児甲状腺がん及び疑い193人11人
2017年6月30日時点福島県発表
会津 中通り 浜通り 避難
8% 55% 18% 19%

3つの一覧表を上下で並べてみます。

1先行検査の受診者30万0473人と
甲状腺がん患者の分類%
会津 中通り 浜通り 避難
11% 56% 19% 14%
9% 56% 17% 18%
8% 55% 18% 19%

1番上の受診者数の行と1番下の集計漏れの甲状腺がん11人も合計した行を比較すると避難区域のみが5%も上昇し、他の3地方の比率はすべて減少しています。

1先行検査の受診者30万0473人と
甲状腺がん患者の分類%
会津 中通り 浜通り 避難区域
11% 56% 19% 14%
8% 55% 18% 19%

福島原発事故によるヨウ素被曝にもっともさらされた避難区域は福島県内でも群を抜いて甲状腺がんになる子供達の比率が多い。

今度は1先行検査の受診者の何人に1人が甲状腺がんになったかを見てみましょう。

甲状腺がん患者は何人に1人いる?193人11人
2017年6月30日時点福島県発表
会津 中通り 浜通り 避難区域
1983人 1510人 1507人 1100人

福島原発事故によるヨウ素被曝にもっともさらされた避難区域は福島県内でも群を抜いて甲状腺がんになる子供達の比率が多い。

福島原発からもっとも離れた会津地方の約2倍近く…避難区域の子供たちは甲状腺がんになっていることがわかります。

福島の甲状腺がんの193人の子供達を4地方別に分類

その傾向が集計漏れの甲状腺がん11人も合計した一覧表を今回追加したことで、よりはっきりしたように思います。

これで集計漏れの甲状腺がん11人と福島県民調査報告書に乗っている甲状腺がん193人の比較は終わります。

■集計漏れの甲状腺がん11人の分布

続いて集計漏れの甲状腺がん11人について詳しくみていきましょう。この記事を読み終わった時には、この一覧表の意味がわかるようになりますので。

福島の子供の甲状腺がんと集計漏れ
2017年6月30日時点
一次検査を受診
せず した
A BC





二次検査を受診
せず した



経過観察+がん疑い
3075人
経過観察 細胞診実施
2305人 770人
経過観察 がん
576人 193人
がん がん がん
3人 1人 7人
集計漏れのがん がん
11人 193人
204人

まず福島県の甲状腺がん検査の対象は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた18歳以下だった子供達、さらに原発事故後の約1年間の間に福島県内で生まれた子供達も検査の対象です。検査対象の子供達は合計で約38万人います。

検査対象の福島県の子供達38万

この甲状腺検査対象の福島県の子供達38万人は、まず甲状腺にエコーを使った一次検査を受けます。

検査対象の福島県の子供達38万
一次検査

ただ何らかの理由でこの一次検査を受けなかった子供達もいます。この何らかの理由でこの一次検査を受けなかった子供達の中から3人甲状腺がんの子供が見つかりました。いずれも福島医大病院で手術を受け、甲状腺がんと確定しました。

福島の子供の甲状腺がんと集計漏れ
2017年6月30日時点
一次検査を受診
せず した
A BC





二次検査を受診
せず した



経過観察+がん疑い
3075人
経過観察 細胞診実施
2305人 770人
経過観察 がん
576人 193人
がん がん がん
3人 1人 7人
集計漏れのがん がん
11人 193人
204人

話を戻します。一次検査を受けた子供達は、甲状腺のしこりの有無などで4つの判定に分類されます。A1A2BCの4種類です。

検査対象の福島県の子供達38万
一次検査
A1 A2 B C

そしてBC判定になった子供達だけ、さらに二次検査を受けます。

しかし何らかの理由でこの二次検査を受けなかった子供達もいます。この何らかの理由でこの二次検査を受けなかった子供達の中から1人甲状腺がんの子供が見つかりました。この子供も福島医大病院で手術を受け、甲状腺がんと確定しました。

福島の子供の甲状腺がんと集計漏れ
2017年6月30日時点
一次検査を受診
せず した
A BC





二次検査を受診
せず した



経過観察+がん疑い
3075人
経過観察 細胞診実施
2305人 770人
経過観察 がん
576人 193人
がん がん がん
3人 1人 7人
集計漏れのがん がん
11人 193人
204人

話を戻します。BC判定になった子供達だけ、さらに二次検査を受けます。

B C
二次検査

そして二次検査を受けた子供達は、検査結果によって2タイプに分類されます。

まず1つ目の再診不要は、また2年後におこなわれる定期検査まで診療の必要はないよ、という事実上の安全宣言です。

それに対して2つ目の通常診療等は、通常の保険診療枠として6か月又は1年後に再診する必要がある子供達と、これからさらに穿刺細胞診を受診する必要がある子供達で構成されます。

二次検査
再診不要 通常診療等

つまり通常診療等は、名前に通常診療という言葉があって一見、問題のない子供達と誤解される方もいるかもしれません。

しかし、その実態は6か月又は1年後に再診する必要がある子供達…これはつまり経過観察の子供達ですし。残りの穿刺細胞診を受診する必要がある子供達も、穿刺細胞診の受診後には、甲状腺がん及び疑いの子供達と経過観察の子供達にわかれます。全然、通常じゃないわけです。

つまり通常診療等の子供達は

経過観察の子供達と甲状腺がん及び疑いの子供達で構成されているのです。

ですので今後は福島県が名付けた通常診療等という実態にそぐわない名称でなく経過観察+甲状腺がん及び疑いと表記して説明を続けます。

ここから先は具体的な人数も記載します。

経過観察+甲状腺がん及び疑いの子供達は、2つに分類されます。

まず6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達。

そして穿刺吸引細胞診を受診する必要がある子供達です。

経過観察+甲状腺がん及び疑い
3075人
経過観察 細胞診実施者
2305人 770人

穿刺吸引細胞診を受診した子供達は、さらに2つに分類されます。

まず6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達。

そして甲状腺がん及び疑いの子供達です。

経過観察+がん及び疑い
3075人
経過観察 細胞診実施者
2305人 770人
経過観察 がん及び疑い
576人 193人

6か月又は1年後に再診する必要がある経過観察の子供達は…

2305人576人2881人

そして経過観察になった子供達2881人のうち少なくとも7人が甲状腺がんになっていたことが今回わかりました。いずれも福島医大病院で手術を受け、甲状腺がんと確定しました。

経過観察+がん及び疑い
3075人
経過観察 細胞診実施者
2305人 770人
経過観察 がん及び疑い
576人 193人
がん及び疑い
7人

■経過観察後の甲状腺がんは多発

繰り返しになりますが経過観察になった子供達は…

2305人576人2881人

経過観察の子供達は2881人です。

その経過観察の子供達2881人のうち少なくとも7人が手術で甲状腺がんと確定したことになります。

2881人÷7人411人に1人

つまり経過観察になった福島の子供達のうち…すでに411人に1人が甲状腺がんを発病して手術を受けたということです。

福島の子供の甲状腺がんと集計漏れ
2017年6月30日時点
一次検査を受診
せず した
A BC





二次検査を受診
せず した



経過観察+がん疑い
3075人
経過観察 細胞診実施
2305人 770人
経過観察 がん
576人 193人
がん がん がん
3人 1人 7人
集計漏れのがん がん
11人 193人
204人

まとめます。今回2018年7月8日に福島医大が福島県民調査報告書に漏れている甲状腺がんの子供達11人を認めた文書を詳しく分析してみましたが、福島県民調査報告書と漏れていた11人を合算することで見えてきたとが2つありました。

福島県内でも避難区域は群を抜いて甲状腺がんになる子供達の比率が多い。

経過観察後に甲状腺がんになった福島の子供は411人に1人と異常に多い。

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※1http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/278763.pdf
※2http://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/6055124091.html
※3https://www.youtube.com/watch?v=kUk42w0zIYc
※3http://www.311kikin.org/2017/04/01/686
※3http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170331/k10010932221000.html
※4https://www.youtube.com/watch?v=-No-zy9jThs
※5先行検査は未受診で本格検査で甲状腺がんが見つかった1人いるので、先行検査を受けた30万0476人に+1人して計算した場合も小数点以下切り捨てのため結果は変わらない
※6https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/219703.pdf
※7http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/273526.pdf
※8http://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/158522.pdf
※8の中間とりまとめのpdfとしての一般公開は2016年3月30日
※91人良性結節なので現在は193人だが良性結節を除外した資料は非公開