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2014年12月25日に公表された最新の調査報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、4か月前…前回の103人から9人増えて合計112人になりました。※1※3

福島県小児甲状腺がん市町村分類2014年10月31日

福島県の発表は甲状腺がんを、悪性…悪性とはがんのことですが『悪性ないし悪性の疑い』という言葉を使い、あたかも甲状腺がんでない子ども達もこの中に含まれているように書くことで、焦点をぼかしチェルノブイリ原発事故との比較を困難にしています。

しかし手術を終えた85人中、良性結節だったのはたった1人にすぎず、81人が乳頭癌、3人低分化癌との診断です。

つまり『悪性ないし悪性の疑い』のうち98%は、小児甲状腺癌でした。

ですので疑いという言葉を過大評価して安心するのは危険です。

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◆はじめに
今あなたが読んでいる、この記事………実は結構、長文です。長文ですので、まずは下記の目次をご覧になっていただき、構成を理解していただくと迷子になりにくいです。以下の5章で構成されています。

【1】先行検査と本格検査

【2】市町村別で比較←★比較地図あり!
【3】事故経過年別で比較
【4】男女別で比較
【5】年齢別で比較

【1】先行検査と本格検査は、先行検査と本格検査の定義を理解していただければ充分です。
【2】~【5】は、福島の小児甲状腺がんと考えられる112人の子供達を市町村別事故から病気発見までの経過年数別男女別事故当時の年齢別にそれぞれ分類して、チェルノブイリ原発事故や過去の日本や福島県のデータと比較しています。

なお、この記事は2014年3月14日に私が当サイトにて発表した論文【緊急】小児甲状腺がん急増?福島県の新事実→2008年患者数0人!に最新データを反映させた第3回目の改訂版です。


【1】先行検査と本格検査

福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達合計112人の患者数の分析を始めるに、今回はじめて本格検査の子供たちから小児甲状腺がんと考えられる子供が見つかりました。先行検査と本格検査の違いがわからないと混乱しますので、まず先行検査本格検査の定義を確認しておきましょう。※2

先行検査は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた『18歳以下だった子供達』約36万人を対象に2011年度、2012年度、2013年度の3年をかけ実施されました。最初の検査ですから『一巡目』や『一回目』の検査と表現される場合もあります。

この先行検査の目的は、定説であるチェルノブイリ原発事故の小児甲状腺がんの増加は最短4、5年を前提とし、原発事故によって小児甲状腺がんが増えるの1年~3年の段階でどれだけ福島県内に小児甲状腺がんの子供達がいるか?調査することを目的としていました。

本格検査は、2011年の福島原発事故当時…福島県に住んでいた『18歳以下だった子供達』に加え原発事故後の約1年間の間に福島県内で生まれた子供達も対象となるので検査対象者は約38万人に増えます。2014年度、2015年度の2年をかけて福島県で実施されます。2回目の検査ですから『二巡目』や『二回目』の検査と表現される場合もあります。

この本格検査の目的は、定説であるチェルノブイリ原発事故の小児甲状腺がんの増加は最短4、5年を前提とし、原発事故によって小児甲状腺がんが増える可能性がある4年に、福島県の子供達に実際に小児甲状腺がんが増えるか?調査することを目的としています。

先行検査 本格検査
実施年度 2011~2013年度 2014年度~
検査期間 3年で福島県内を一周 2年で福島県内を一周
対象人数 36万7000人 38万5000人

先ほど記事の一番最初に「2014年12月25日に公表された最新の報告書によると、福島県の小児甲状腺がん及び疑いの子供達は、4か月前…前回の103人から9人増えて合計112人になりました」と書きましたが、増えた9人の内訳は、先行検査+5人本格検査+4人です。今回増えた9人を市町村別に分類した一覧表が下記です。

先行検査
市町村名 2014年6月30日→ 2014年10月31日 増加人数
郡山市 23人→ 25人 +2人
いわき市 19人→ 21人 +2人
会津若松市 5人→ 6人 +1人
合計 +5人

発病率がわかるよう色分けしました。
…1人~999人に1人が発病
…1000人~1999人に1人が発病
…2000人~2999人に1人が発病
…3000人~3999人に1人が発病
…4000人~5999人に1人が発病

本格検査
市町村名 2014年6月30日→ 2014年10月31日 増加人数
大熊町 1人→ 2人 +1人
田村市 3人→ 4人 +1人
伊達市 2人→ 3人 +1人
福島市 12人→ 13人 +1人
合計 +4人

問題は本格検査で見つかった小児甲状腺がんと考えられる4人の子供達は全員、数年前に先行検査を受けた際、甲状腺に「問題があった」ことを示すC判定B判定ではなく、「問題なし」のA判定された子供達だったということです。※3

本格検査で小児甲状腺がんを疑われている4人先行検査時の判定
判定 定義 人数
・甲状腺の状態等から判断して、直ちに二次検査を要する場合
・5.1 ㎜以上の結節や20.1 ㎜以上ののう胞を認めた場合
・甲状腺の状態等から二次検査を要すると判断した場合
A2 5.0 ㎜以下の結節や20.0 ㎜以下ののう胞を認めた場合 2人
A1 結節やのう胞を認めなかった場合 2人

特にA1判定の2人にはそもそも、結節やのう胞自体がなかったはずなのです。つまり先行検査後1~3年で結節やのう胞ができ…新たに小児甲状腺がんを発病した可能性がある。それで共同通信や東京新聞などが検査結果が公表される前日12月24日に「小児甲状腺がん増加か?」という観点で報道したわけです。

それに対して2014年12月25日に開かれた…福島県の「県民健康調査」検討委員会で国立がんセンターの津金昌一郎委員は「一番考えられるのは、まず(甲状腺エコー)検査の感度が100%ではないことによってもたらされたと…考えなくちゃいけない。3年前も(4人の子供達のがんは)あったのかもしれない」と先行検査時にすでに発病していたのを単に見落としただけ…つまり遠回しですが…新たに小児甲状腺がんを発病した可能性は低い…と加熱する報道に苦言を呈しています。※4

本格検査で小児甲状腺がんと考えられる子供達が4人見つかった…という事実は1つですが、その事実をどう解釈するかで2つの真逆の見解が導き出されているわけです。先行検査に発病したんだ、いいや、先行検査からあったのを単に先行検査で見落としただけだ。

確かに前例のない36万7000人もの子供達の甲状腺エコー検査を、1人につき3分間を目安にして3年もの歳月をかけて実施したわけですから4人程度の見落としがあっても不自然ではありませんし、かといって反対の結論である…この4人は先行検査後に小児甲状腺がんを発病したんだ、これから急増する子供達の小児甲状腺がんの先駆けなんだ、この可能性ももちろん否定できないわけです。

ところで、この甲状腺検査の責任者である福島県立医科大学の鈴木眞一教授は、この4人の子供達の小児甲状腺がんについて…どう考えているのでしょうか?

鈴木眞一教授は2014年12月25日に開かれた…福島県の「県民健康調査」検討委員会後の記者会見で「(先行検査のエコー画像を見直した結果)明らかにそういうもの(見落とし)ではなさそうですけど。…超音波(検査装置)で見えていないものが存在していて、それが腫瘍のタイプによっては(超音波検査の際に)最初から小さくキラっと光って見えるものもあれば、中には数は少ないですけど…ある大きさにならないと超音波に映らないタイプもありますので…」と見解を述べています。※5

つまり検査で使用している超音波検査装置の性能限界を超え、発見できない腫瘍が先行検査時から存在していた可能性を指摘し、新たに小児甲状腺がんを発病した可能性は遠まわしに否定しています。

この問題については、今後さらに本格検査が進むことで時間が解決してくれると個人的には考えています。

【2】市町村別で比較

小児甲状腺がんと考えられる112人の福島県の子供達を市町村別に分類し、その市町村の子供達の何人に1人が発病したか?を色分けしたのが下記の地図となります。

地図の右側の真ん中にある×が福島第一原発です。
…1人~999人に1人が発病
…1000人~1999人に1人が発病
…2000人~2999人に1人が発病
…3000人~3999人に1人が発病
…4000人~5999人に1人が発病

福島県小児甲状腺がん市町村分類2014年10月31日
この地図を一覧表にしてみましょう。甲状腺癌及びその疑いの子供は何人に1人いるのか?発病した割合が高い市町村順に並べてあります。

≪福島県小児甲状腺がん及び疑い人数≫
2014年10月31日時点福島県発表
市町村名 患者数 患者は何人に1人いる?
川内村 1人 280人に1人
湯川村 1人 508人に1人
下郷町 1人 691人に1人
大玉村 2人 686人に1人
平田村 1人 829人に1人
大熊町 2人 986人に1人
川俣町 2人 1110人に1人
泉崎村 1人 1157人に1人
田村市 4人 1581人に1人
浪江町 2人 1624人に1人
本宮市 3人 1744人に1人
二本松市 5人 1771人に1人
白河市 6人 1801人に1人
猪苗代町 1人 1881人に1人
会津坂下町 1人 2080人に1人
石川町 1人 2086人に1人
郡山市 25人 2162人に1人
棚倉町 1人 2259人に1人
いわき市 21人 2281人に1人
富岡町 1人 2302人に1人
会津若松市 6人 2447人に1人
三春町 1人 2730人に1人
須賀川市 4人 2897人に1人
伊達市 3人 3535人に1人
西郷村 1人 3618人に1人
福島市 13人 3639人に1人
南相馬市 2人 5394人に1人
合計 112人 2648人に1人

川内村は280人に1人、湯川村は508人に1人など目を疑いたくなるような数字が並んでいますが、平均すると福島県の子供達の2648人に1人が小児甲状腺がん及び疑いだという事実がはっきりとわかります。

ところで、この発病率はだんだん高くなっているのでしょうか?低くなっているのでしょうか?

以前に発表されたの報告書とも比較して福島県の小児甲状腺がん患者数の推移を確認してみます。

福島県の小児甲状腺がん患者数と比率の推移
年月日 患者数 患者は何人に1人いる?
2013年12月31日 74人 3639人に1人
2014年3月31日 89人 3320人に1人
2014年6月30日 103人 2874人に1人
2014年10月31日 112人 2648人に1人

福島県内の小児甲状腺癌患者数の割合は、発表のたび高くなっていていることがわかります。
前々々回2013年12月31日は、3639人に1人
前々回2014年3月31日は、3320人に1人
前回2014年6月30日は、2874人に1人
今回2014年10月31日は2648人に1人となりました。

今回の福島県の子供達の小児甲状腺がんの発病率を私達はどのように考えればいいのでしょうか?

今回の福島の調査結果と比較できる資料はないか?探していたところチェルノブイリ原発事故当時日本ベラルーシの小児甲状腺ガン患者数の資料を見つけることができました。しかも17年分も。その資料と福島県の資料をわかりやすく比較してみます。

【3】事故経過年別で比較

日本でよく言われる100万人あたり何人が小児甲状腺がんになるか?という形で統一し、さらに原発事故後何年で甲状腺がんが増えるか?が一目で分かるように1年ごとの年表にして、今回の福島県の調査結果と共に一覧表にしてみました。

情報源は、日本は国立がん研究センターがん対策情報センター※6、ベラルーシは長崎大学…これは山下俊一福島県立医科大学副学長が作成した資料※7です。福島県は県民健康管理調査の検討委員会資料※1※3です。

このように元々3つの資料はバラバラですので甲状腺癌の定義に微妙に違いがあります。

日本は実測を元にした推定罹患数(りかんすう、新たにがんと診断された数)、ベラルーシは小児甲状腺がんの手術件数、福島県は小児甲状腺がん及びその疑いの数です。

この一覧表における小児の年齢の定義は、日本は0~19歳まで。ベラルーシだけは2つ列がありますが0~14歳15~18歳です。福島県は、2011年3月11日時点で概ね18歳以下だった者です。

その他の違いについてはそれぞれの論文・資料をご覧下さい。

≪チェルノブイリと福島原発事故の比較≫
100万人に何人小児甲状腺がん患者がいる?
チェルノブイリ原発事故 福島原発事故
原発事故から 日本 ベラルーシ 福島県
0-14歳 15-18歳
0年 0人 0人 3人 334人
1年 0人 1人 8人 401人
2年 1人 3人 3人 329人
3年 1人 2人 2人 49人
4年 2人 12人 6人
5年 2人 23人 14人
6年 3人 29人 10人
7年 2人 34人 29人
8年 2人 35人 32人
9年 1人 40人 38人
10年 1人 38人 30人
11年 1人 31人 42人
12年 2人 26人 56人
13年 2人 25人 66人
14年 2人 17人 95人
15年 2人 7人 113人
16年 2人 0人 97人

チェルノブイリ原発事故後も、日本の小児甲状腺癌患者数は100万人中0人~3人で安定しています。これに対してベラルーシは0-14歳は原発事故後4年後から100万人中12人、15-18歳は原発事故後5年後から100万人中14人となり、そのまま爆発的な上昇を続けています。

このチェルノブイリ原発事故当時の日本とベラルーシと比較することで、今回の福島県の小児甲状腺がん患者数がいかに異常な数値か…はっきりしました。福島原発事故のあった2011年に100万人中334人、1年後には100万人中401人、2年後も100万人中329人、3年後はまだ検査結果の27%しか確定していません(2014年10月31日現在)がベラルーシと同程度の100万人中49人となっています。

【4】男女別で比較

福島県の小児甲状腺がん患者数が、ベラルーシと比べても異常に多いことは先ほどの「100万人に何人小児甲状腺がん患者がいる?」一覧表で理解できました。しかし、もともと福島県民の子供達は小児甲状腺がんになりやすい体質や遺伝子を持ち、国民病ならぬ県民病だった可能性はないでしょうか?

答えは、残念ながら違います。国立がん研究センターがん対策情報センター※8の資料に、2008年の福島県の甲状腺がん罹患率があります。罹患率(りかんりつ)とは、10万人に何人が新たに…がんと診断されるかの頻度をあらわすもので、この罹患率の計算に使われた福島県の年齢別人口※9を使って逆算して実際の患者数を復元したのが下の一覧表です。

≪2008年福島県の甲状腺がん罹患数≫
※罹患数(りかんすう)とは新たにがんと診断された人数
年齢
0-4歳 0人 0人
5-9歳 0人 0人
10-14歳 0人 0人
15-19歳 0人 0人
20-24歳 0人 0人
25-29歳 1人 3人
30-34歳 2人 3人
35-39歳 2人 9人
40-44歳 1人 5人
45-49歳 1人 6人
50-54歳 1人 8人
55-59歳 3人 15人
60-64歳 6人 5人
65-69歳 3人 13人
70-74歳 4人 11人
75-79歳 3人 9人
80-84歳 1人 5人
85歳~ 3人 1人
全年齢合計 31人 93人
男女総計 124人

2008年の福島県では、0歳~19歳まで小児甲状腺がんになった子供は男女とも0人だったのです。しかも20歳~24歳の男女まで0人です。

つまり福島県民の子ども達が元々、小児甲状腺癌になりやすい体質や遺伝子をもつわけではない。

なお福島県では小児甲状腺がんが0人だった2008年。2008年の日本全国すべての0歳~19歳の子供達で小児甲状腺ガンになった人数は、男女合計で72人と推定されています。※6

2012年に福島県で見つかった小児甲状腺がん患者数は、下記の一覧表の通り男子21人女子35人の合計56人です。

≪福島県小児甲状腺がん及び疑い患者数≫
西暦
2011年 5人 10人
2012年 21人 35人
2013年 12人 26人
2014年 3人 1人
合計 41人 72人
男女総計 113人※10

2008年から4年のズレがあるので単純に比較できませんが、もし同じ年なら全国患者数の77%を福島県だた1つの県のみで占めていることになります。

しかし山下俊一福島医科大学副学長は、この子ども達の小児甲状腺がんの急増を目の当たりにしても…何食わぬ顔で福島原発事故との因果関係全面否定します。

山下俊一福島県立医科大学副学長
「福島県の子供たち全員を対象にスクリーニング検査を実施したので、将来甲状腺がんになる患者を早めに発見できた。(だから小児甲状腺がんは増えていない)」

この山下俊一福島県立医科大学副学長の主張を考察してみましょう。

■山下俊一福島医科大学副学長への反論

先ほどもご覧いただきましたが福島県2012年男子の小児甲状腺がんは下の一覧表の通り21人です

≪福島県小児甲状腺がん及び疑い患者数≫
西暦
2011年 5人 10人
2012年 21人 35人
2013年 12人 26人
2014年 3人 1人
合計 41人 72人
男女総計 113人※10

この21人がもし、山下俊一福島県立医科大学副学長が言うようにスクリーニング効果…福島県で将来甲状腺がんになる患者を早めに発見できたとするならば、いったい何歳までに発病する甲状腺がんを発見できたことになるのか?2008年福島県の全年齢の男性患者数に当てはめてみましょう。すると…

≪2008年福島県の甲状腺がん罹患数≫
※罹患数(りかんすう)とは新たにがんと診断された人数
年齢
0-4歳 0人 0人
5-9歳 0人 0人
10-14歳 0人 0人
15-19歳 0人 0人
20-24歳 0人 0人
25-29歳 1人 3人
30-34歳 2人 3人
35-39歳 2人 9人
40-44歳 1人 5人
45-49歳 1人 6人
50-54歳 1人 8人
55-59歳 3人 15人
60-64歳 6人 5人
65-69歳 3人 13人
70-74歳 4人 11人
75-79歳 3人 9人
80-84歳 1人 5人
85歳~ 3人 1人
全年齢合計 31人 93人
男女総計 124人

25歳~74歳までに甲状腺がんを発病する人達を今回の調査で一挙に発見したということになります。とすると、これらの甲状腺がんの潜伏期間は最短7年~最長74年ということになり60年も70年も先の甲状腺ガンを今見つけることに成功したことになるわけです。もはや神です。

それから私がおかしいな…と思うのが今回の小児甲状腺がん患者の男女比です。国立がん研究センターがん対策情報センターの資料※6を見ると直近30年分の甲状腺がんの男女比は男性患者が全体の13%~28%で推移しています。つまり女性の患者のほうが圧倒的に多いんです。2008年の福島県の全年齢での男女比でも男性患者は25%にすぎません。しかし今回の福島県の子供達の小児甲状腺がん患者数はこの男女の比率が大きく崩れ、4年間の合計では男性患者は36%になっています。

≪福島県小児甲状腺がん及び疑いの男女比≫
2011年 33% 67%
2012年 37% 63%
2013年 32% 68%
2014年 75% 25%
合計 36% 64%

2012年は男性患者数が37%にもなっています。そして2011年33%2013年32%2014年はまだ検査結果の27%しか確定していません(2014年10月31日現在)ので参考程度ですが75%です。4年合計で計算すると36%となります。

これから甲状腺がんになる患者を早めに発見できたと主張するのであれば男女比がこんなに崩れることはないはずです

今回、福島の小児甲状腺がん患者における男女比に大きな変化があった以上、福島原発事故由来の放射能によって男の子の小児甲状腺がん患者数が急増したと考えるほうが自然ではないでしょうか。

【5】年齢別で比較

しかし福島県の甲状腺検査の責任者である福島県立医科大学の鈴木眞一教授は、この小児甲状腺がんの急増と福島原発事故との因果関係をチェルノブイリの発病期間の先例をもちいて…事故当初から一貫して完全否定しています。

鈴木眞一福島医科大学教授
「チェルノブイリ(原発事故)では最短4、5年で甲状腺がんが増加した(だから福島県で見つかっている甲状腺がんと被曝の因果関係はない)」

■鈴木眞一福島医科大学教授への反論

今度は、その根拠となっている山下俊一福島県立医科大学副学長が作成したベラルーシ・ゴメリ州の原発事故当時の年齢別の資料※11を見てみましょう。

この資料はベラルーシ・ゴメリ州の小児甲状腺癌患者数を、↓下方向はチェルノブイリ原発事故時の年齢、 →右方向はチェルノブイリ原発事故から何年か?で分類した表です。見やすくするため6年分だけを抜粋し、10歳以上はすべて黄色に、9歳以下は発病ピーク前の1~3年は緑色に、発病ピーク後の4年~6年は赤に染め、三色に色分けしました。

ベラルーシ/ゴメリ州の小児甲状腺がん登録数
↓事故当時の年齢■原発事故からの年数→
1年 2年 3年 4年 5年 6年
0歳 2人 2人
1歳 1人 2人 3人 5人
2歳 10人 3人
3歳 1人 6人 2人
4歳 4人 1人 3人
5歳 1人 1人 3人 4人
6歳 2人 3人 3人
7歳 1人 4人 4人
8歳 1人 2人 1人 4人
9歳 3人 3人
10歳 3人 1人
11歳 1人 2人
12歳 1人
13歳 1人 1人
14歳 1人 1人 2人
15歳 1人 3人 1人
16歳 1人 1人
17歳 1人 2人

まずは緑色の部分…原発事故当時に9歳以下だった子供達の原発事故から1年~3年までの3年分の患者数に注目して下さい。患者数は1歳1人+5歳1人+7歳1人+8歳1人で合計4人ですね。

今度は黄色の部分…黄色の部分はすべて10歳以上でしたね、この黄色の部分もさっきと同じように原発事故から1年~3年までの3年分の患者数を数えてみましょう。すると合計8人です。※間違えて赤の部分と接している黄色の部分…原発事故から4年、5年、6年も数えないように注意しましょう。

原発事故から1年~3年までの3年分の患者数を見た場合、原発事故当時に9歳以下だった子供達は4人、10歳以上だった子ども達は8人です。

つまり原発事故から1年~3年までの3年分の患者数は、むしろ原発事故当時10歳以上だった子ども達のほうに小児甲状腺がんが多いのです。

しかし原発事故から4年たつと原発事故当時9歳以下だった子供の発病が急増します。一覧表の赤の部分です。たった1年間だけで、10歳以上の今までの3年分の合計人数を抜き去ってしまいます。

それに対して原発事故当時10歳以上だった子供達の小児甲状腺がん患者数…黄色の部分は、原発事故の1年後から増えていますが、4年後も急増することなく推移し、下記が一覧表の完全版ですが…10歳17歳の12年分の合計が一覧表の右下にありますが12人前後が多いですから、10歳17歳は1年に1人くらいが発病と一定していることがわかります。(一覧表はチェルノブイリ原発事故の子供の小児甲状腺がんより)
【ベラルーシ・ゴメリ州】子供の小児甲状腺がん患者数の推移(山下俊一)
もちろんチェルノブイリ原発事故前や事故当年…青の部分を見るとわかるように0歳17歳の全年齢で、小児甲状腺癌は1人いるかいないかでしたから原発事故当時10歳以上だった子供達の小児甲状腺がんは、明らかに1年後から増えているんです。

福島県の健康調査で福島県立医科大学の鈴木眞一教授の主張ではこの黄色の部分10歳以上の統計を完全無視して「小児甲状腺がん増加は最短で4、5年後」と何度も念仏のように繰り返しています。つまり鈴木眞一教授の主張が根本的に間違っていることを、皮肉なことに上司である山下俊一福島県立医科大学副学長が作成した資料が証明しているのです。

続いて、現在の福島県の小児甲状腺ガン患者数は4年分しかデータ※1※3がありませんから、比較するために今回のベラルーシ・ゴメリ州も原発事故後4年分だけをピックアップし、原発事故当時の年齢で分類してみました。

原発事故から4年分の
小児甲状腺がん患者の年齢別分布表
チェルノブイリ原発事故 福島原発事故
原発事故当時の年齢 ベラルーシ-ゴメリ州 日本-福島県
0歳
1歳 1人
2歳
3歳
4歳
5歳 1人
6歳 2人
7歳 1人
8歳 1人 1人
9歳 3人
10歳 3人
11歳 1人 5人
12歳 1人 9人
13歳 1人 11人
14歳 2人 10人
15歳 1人 14人
16歳 2人 19人
17歳 1人 22人
18歳 不明 14人

上の4年分の一覧表の左右を見比べていただけるとベラルーシ・ゴメリ州も福島県も、小児甲状腺がん患者数の分布が事故当時9歳以下緑色の部分よりも事故当時10歳以上黄色の部分に集中しているのがよくわかると思います。

つまり原発事故当時の年齢で小児甲状腺がんの子供たちを分類すると…今のところチェルノブイリと福島県は、ほぼ同じ年齢分布だということです。

今回の私の推測が正しかったかどうかは福島原発事故から4、5年後の赤の時期…つまり検査結果の判明する2016年、2017年になればはっきりするでしょう。もしも、福島県立医科大学の山下俊一副学長や鈴木眞一教授達が調査結果を隠ぺいしなければ、ですが。

ところで先ほどのベラルーシ/ゴメリ州の一覧表では0歳9歳の年代は原発事故から4年後に小児甲状腺がんが増加していました。10歳17歳の年代は原発事故1年後に小児甲状腺がんが増加していました。
【ベラルーシ・ゴメリ州】子供の小児甲状腺がん患者数の推移(山下俊一)

≪ベラルーシ/ゴメリ州・小児甲状腺がん≫
年代 増加は何年後?
0~9歳 4年後
10~17歳 1年後

しかし実は…もっと前から小児甲状腺がんが増加していた可能性があります。

と言うのは、先ほどのベラルーシ/ゴメリ州の一覧表では0歳9歳の年代は原発事故から4年後に小児甲状腺がんが増加していました。10歳17歳の年代は原発事故1年後に小児甲状腺がんが増加していました。

逆を言えば0歳9歳の年代は原発事故から0~3年では小児甲状腺がんが増えていなかったことが診察や検査によって確認されていることが必要なはずです。同じく10歳17歳の年代は原発事故0年では小児甲状腺がんが増えていなかったことが診察や検査によって確認されていることが必要なはずです。

0年から3年では小児甲状腺がんが増えていなかったのに4年後になったら甲状腺ガンが増加したと主張するからこそ原発事故から最短4年という期間の科学的な意味の正当性が証明されるわけですから。

しかし2014年3月11日に放送されたニュース番組『報道ステーション』においてチェルノブイリ原発事故当時からウクライナ内分泌代謝研究センターの所長を務めているミコラ・トロンコ所長はこう話しています。
ウクライナ内分泌代謝研究センターのミコラ・トロンコ所長
「(チェルノブイリ原発事故)当時のソ連(現在のウクライナ、ベラルーシ、ロシアなど)に高性能のエコー診断装置はなかった。1989年か1990年になってアメリカの大富豪などからエコー診断装置の寄贈を受けた」

チェルノブイリ原発事故が起きたのは1986年4月26日です。

つまりチェルノブイリ原発事故後3年か4年たって初めて高性能のエコー診断装置が導入された。ということはそれ以前、チェルノブイリ原発事故後0~2年または0~3年の間、当時のソ連では高性能のエコー診断装置がない状況で診察がおこなわれてきたということです。そして一覧表では、高性能のエコー診断装置が導入された原発事故の4年後から0歳9歳の年代の小児甲状腺がんの登録数が爆発的に増加しています。
【ベラルーシ・ゴメリ州】子供の小児甲状腺がん患者数の推移(山下俊一)
よって0歳9歳の年代は原発事故から4年後10歳17歳の年代は原発事故1年後に小児甲状腺がんが増加した…と言うより増加が確認されたと言ったほうが適切でしょう。

≪ベラルーシ/ゴメリ州・小児甲状腺がん≫
年代 増加の確認は何年後?
0~9歳 4年後
10~17歳 1年後

高性能のエコー診断装置の導入がもっと早ければ、もっと早く見つかったかもしれませんから。

そして年齢を限定せず単に子供の小児甲状腺がん増加を語る場合には、事故から1年後に小児甲状腺がんの増加を確認したと言うべきでしょう。

よって福島県の甲状腺検査の責任者である福島県立医科大学の鈴木眞一教授によるこの主張。

鈴木眞一福島医科大学教授
「チェルノブイリ(原発事故)では最短4、5年で甲状腺がんが増加した(だから福島県で見つかっている甲状腺がんと被曝の因果関係はない)」

鈴木眞一教授の主張は、10歳17歳の年代は原発事故1年後に小児甲状腺がんが増加した事実を無視している点。さらに、この資料自体が根源的に抱えている高性能のエコー診断装置の導入がもっと早ければ小児甲状腺がんがもっと早期に見つかったかもしれないという事実を無視している点で、二重の意味で間違っています。

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※1https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96850.pdf
※2https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/55191.pdf
※3https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/96851.pdf
※4https://www.youtube.com/watch?v=eOfOErRGNfw ※1時間00分より
※5https://www.youtube.com/watch?v=guaUA4MFGeI ※1時間25分より
※6http://ganjoho.jp/professional/statistics/statistics.html
※7http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/coe/jp/activities/elearning/lecture/02-02.html
※7http://depts.washington.edu/epidem/Epi591/Spr09/Chernobyl%20Forum%20Article%20Cardis%20et%20al-1.pdf※リンク切れ
※8http://ganjoho.jp/professional/statistics/monita.html
※9http://ncrp.ncc.go.jp/file/pop/07_all_1950-2010.csv
※101人良性結節なので現在は112人だが詳しい新資料非公開の為古い資料を使用した
※11http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm